【6類型】職場のパワハラとは?判断の3要素と、会社が動かないときの相談先

【この記事の結論】
職場でのその行為がパワハラかは、厚生労働省が示す3つの要素を満たすかで判断します。

「これくらいで騒ぐのは大げさだろうか」と考えて、誰にも言えないまま働いている方は少なくありません。厚生労働省の調査では、過去3年間に職場でパワーハラスメントを受けたと答えた方は19.3%にのぼります。

この記事では、その行為がパワハラに当たるかを判断する3つの要素と6つの類型を、厚生労働省の指針に沿って整理します。あわせて、同じ調査から「受けた方が実際にどう動いたか」を見たうえで、記録の残し方、社内と社外の相談先、会社が動かなかったときに残る選択肢までを扱います。

受けている最中は、自分の受け取り方の問題ではないかと感じやすいものです。実際、パワハラを受けた方の36.9%は何もしないまま終えており、社内の相談窓口を使った方は4.5%にとどまります。動けないまま時間が過ぎている状態は、めずらしいことではありません。

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目次

職場のパワハラとは?3つの要素すべてに当てはまるかで判断する

職場のパワーハラスメントは、3つの要素をすべて満たす行為を指します。①優越的な関係を背景としている、②業務上必要かつ相当な範囲を超えている、③労働者の就業環境が害されている、の3つです。厚生労働省が指針で示している定義で、3つがそろう場合はパワハラに該当する可能性があります。

厚生労働省が示すパワハラの定義と3要素

厚生労働省の指針は、職場におけるパワーハラスメントを次の3つの要素で定義しています。

指針要素
優越的な関係を背景とした言動である行為を受けた方が、相手に抵抗したり拒んだりすることができない可能性が高い関係のもとで行われた言動を指します。
業務上必要かつ相当な範囲を超えている業務上明らかに必要性がない言動、またはその態様が相当でない言動を指します。
労働者の就業環境が害される身体的または精神的な苦痛を受け、能力を発揮できなくなるなど、働くうえで見過ごせない程度の支障が生じている状態を指します。

指針は、この3つをすべて満たすものを職場のパワーハラスメントとしています。ただし、当てはまるかどうかを一人で判断しきる必要はありません。判断に迷う段階でも相談はできます。

上司からとは限らない|行為者の65.7%は上司、24.7%は役員

厚生労働省の実態調査では、パワハラの行為者として最も多く挙げられたのは「上司(役員以外)」で65.7%、次いで「会社の幹部(役員)」が24.7%でした。数のうえでは、上司から受けているケースが中心です。

ただし「優越的な関係」は、上司から部下への言動だけを指すものではありません。指針では、同僚や部下による言動も含まれる場合があるとしています。その人の知識や経験がなければ業務を円滑に進めることが難しい場合や、集団による行為で抵抗や拒絶が難しい場合です。

先輩や同僚から受けている、あるいは部下から集団で受けている、という場合も対象から外れるわけではありません。

業務上の指導とハラスメントを分ける線はどこにあるのか

指針では、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントには該当しないとされています。厳しい指導がそのままパワハラになるわけではありません。

分かれ目になるのは、2つ目の要素「業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」です。指針は、次のような言動がこれに含まれるとしています。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 行為の回数や行為者の数など、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

判断にあたっては、さまざまな事情を総合的に考慮するとされています。言動の目的、行われた経緯や状況、業種や業務の内容、言動の態様・頻度・継続性、受けた方の心身の状況、行為者との関係性などです。1回の出来事だけで決まるものではなく、繰り返されているかどうかも要素の1つになります。

受け手が不快に感じれば、すべてハラスメントになるわけではない

3つ目の要素「就業環境が害される」の判断は、受けた方の主観だけで決まるものではありません。指針は「平均的な労働者の感じ方」を基準とするとしています。同じ状況で同じ言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、働くうえで見過ごせない程度の支障が生じたと感じるような言動かどうか、という見方です。

ただし、これは受けた方の感じ方が考慮されないという意味ではありません。指針は、相談を受けた側が、相談した方の心身の状況や受け止めにも配慮しながら丁寧に事実確認を行うよう求めています。相談する側から見れば、そのときどう感じたかを伝えてよい、ということです。

判断がつかない状態のまま相談しても構いません。該当するかどうかを自分で結論づけてから動く必要はない、と考えていただいて大丈夫です。

「職場」と「労働者」には、正社員以外も含まれる

指針が言う「職場」は、ふだん働いているオフィスの中だけを指すものではありません。通常就業している場所以外であっても、業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。厚生労働省は、出張先、業務で使用する車中、取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む)などを例に挙げています。

「労働者」も正社員に限りません。パートタイム労働者や契約社員といった非正規雇用の方を含め、事業主が雇用する労働者のすべてが対象です。派遣で働いている方は、派遣元だけでなく派遣先に対しても、同じように守られる立場にあります。

雇用形態や働く場所を理由に、対象から外れることはありません。

※ 参考元:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)/厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」/厚生労働省「あかるい職場応援団|パワーハラスメントとは」

3つの要素は判断の枠組みですが、これだけでは自分の状況を当てはめにくいかもしれません。次は、厚生労働省が整理している6つの類型に沿って、具体的な言動を見ていきます。

働きづらさの原因が職場の関係性にあるのか、働き方そのものとの相性にあるのかを整理したい方は、「メンタルが弱いと感じる人へ。仕事が続かない原因とおすすめの職業」もあわせてご覧ください。

【パワハラ6類型】いま受けている行為が、どれに当たるかで確かめる

厚生労働省は職場のパワーハラスメントを6つの類型に整理しています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つです。

6つの類型は、覚えるためのものではありません。いま起きていることを当てはめて、どれに近いかを確かめるための枠組みです。

なお指針は、これらの例が限定列挙ではないとしています。6つのどれにもぴったり当てはまらない場合でも、相談の対象から外れるわけではありません。

類型該当すると考えられる例該当しないと考えられる例
①身体的な攻撃殴打、足蹴り/物を投げつける誤ってぶつかる
②精神的な攻撃人格を否定する言動/長時間にわたる厳しい叱責の繰り返し/面前での大声での威圧的な叱責の繰り返し/罵倒する内容のメールを複数人へ送る再三注意しても改善されない場合の一定程度強い注意/重大な問題行動への一定程度強い注意
③人間関係からの切り離し仕事を外し、長期間にわたり別室に隔離・自宅研修させる/同僚が集団で無視し孤立させる新規採用者への短期間集中の別室研修/懲戒処分後、復帰前の一時的な別室研修
④過大な要求過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を長期間命じる/必要な教育なしに到底対応できない目標を課し厳しく叱責する/業務と関係のない私的な雑用を強制する育成のため現状より少し高いレベルの業務を任せる/繁忙期に業務上の必要から通常より一定程度多い業務を任せる
⑤過小な要求退職させるため、管理職に誰でもできる業務を行わせる/嫌がらせのために仕事を与えない能力に応じて業務内容や業務量を一定程度軽減する
⑥個の侵害職場外でも継続的に監視する/私物の写真撮影をする/機微な個人情報を本人の了解を得ずに暴露する配慮を目的として家族の状況等をヒアリングする/本人の了解を得て、必要な範囲で人事労務部門に伝達する

似た行為でも、目的や期間、繰り返しの有無で扱いが変わります。分かれ目は、業務上の必要があるかどうかと、その程度が相当かどうかの2点です。

類型①:身体的な攻撃

暴行や傷害にあたる型です。指針は次を例に挙げています。

  • 殴打、足蹴りを行うこと
  • 相手に物を投げつけること

一方、誤ってぶつかることは、該当しないと考えられる例とされています。

意図があったかどうかが分かれ目です。

類型②:精神的な攻撃

言葉や態度で追い詰める型です。指針が挙げる例は4つあります。

  • 人格を否定するような言動を行うこと
  • 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと
  • 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと
  • 相手の能力を否定し、罵倒するような内容のメール等を、本人を含む複数の労働者宛てに送信すること

人格を否定する言動には、相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動も含まれるとされています。

一方、遅刻など社会的ルールを欠いた言動が再三の注意でも改善されない場合や、重大な問題行動があった場合に一定程度強く注意することは、該当しないと考えられる例です。

分かれ目は、注意の対象が「行動」なのか「人格」なのか。そして繰り返されているか、他の人の前で行われているかです。

類型③:人間関係からの切り離し

隔離、仲間外し、無視がこの型です。指針は次を例に挙げています。

  • 意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること
  • 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること

一方、次の2つは該当しないと考えられる例とされています。

  • 新規に採用した労働者を育成するために、短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること
  • 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者を通常業務に復帰させる前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること

類型④:過大な要求

業務上明らかに不要なことや、こなせないことを強いる型です。指針は次を例に挙げています。

  • 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での、勤務に直接関係のない作業を命ずること
  • 新卒採用者に必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること]
  • 業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること

一方、育成のために少し高いレベルの業務を任せることや、繁忙期に業務上の必要から通常より一定程度多い業務を任せることは、該当しないと考えられる例です。

量の多さそのものより、業務上の必要があるか、教育や支援が伴っているかが材料になります。

類型⑤:過小な要求

仕事を与えない、能力とかけ離れた程度の低い仕事だけをさせる型です。指針は次を例に挙げています。

  • 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること
  • 気にいらない労働者に対して、嫌がらせのために仕事を与えないこと

一方、能力に応じて業務内容や業務量を一定程度軽減することは、該当しないと考えられる例です。

同じ「仕事が減る」でも、配慮による軽減なのか、辞めさせることや嫌がらせが目的なのかで意味が変わります。

類型⑥:個の侵害

私的なことに過度に立ち入る型です。指針は次を例に挙げています。

  • 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること
  • 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露すること

一方、次の2つは該当しないと考えられる例とされています。

  • 配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと
  • 本人の了解を得て、機微な個人情報を必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと

了解を得ているかどうかと、目的が配慮なのかが分かれ目になります。

パワハラを受けたと回答した方の割合には、業種による差もありました。厚生労働省の実態調査では建設業が26.8%と最も高く、複合サービス業22.5%、教育・学習支援業と医療・福祉がそれぞれ20.6%と続いています。

ただしこれは回答した方の割合で、業種そのものの性質を表すものではありません。

※ 参考元:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)/厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」

ここまではパワーハラスメントの話でした。職場ではモラハラやセクハラ、カスハラという呼び方もよく使われます。次はその違いを整理します。

どれにも当てはまらないものの働き続けることがつらい、という場合は、「仕事の辞めどきとなる14のサイン」で判断の材料を整理しています。

パワハラ以外で職場に多いもの|モラハラ・セクハラ・カスハラとの違い

モラハラ、セクハラ、カスハラという呼び方は、どの制度で相談するかの手がかりになります。ただし職場で起きたモラハラや職場いじめは、内容によってはパワーハラスメントの3つの要素を満たし、6類型のいずれかに当てはまる場合があります。

呼び方職場での典型例根拠となる法律相談先の入口
パワハラ身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害の6類型労働施策総合推進法社内の相談窓口/都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
モラハラ無視する、人格を否定する言葉をかける、態度で追い詰める固有の根拠法はなし。職場では内容によりパワハラとして扱われます同上(パワハラとして相談可)
セクハラ対価型(拒否を理由に不利益を受ける)/環境型(就業環境が害される)男女雇用機会均等法同上
マタハラ・パタハラ制度等の利用への嫌がらせ型/状態への嫌がらせ型男女雇用機会均等法、育児・介護休業法同上
カスハラ顧客や取引先などからの著しい迷惑行為改正労働施策総合推進法(2026年10月1日施行)同上

根拠になる法律は分かれていますが、相談の入口はほぼ同じです。呼び方を決めてから動く必要はありません。

モラハラ:言葉や態度で追い詰める型。パワハラとの重なり方

モラルハラスメントを直接定義した法律は、日本にはありません。職場で起きたモラハラは、パワーハラスメントの範囲で扱われるのが一般的です。

無視や人格を否定する言葉は、6類型の「精神的な攻撃」や「人間関係からの切り離し」に当たる場合があります。モラハラだから窓口が使えない、ということはありません。

セクハラ:対価型と環境型の2つ

厚生労働省は、職場のセクシュアルハラスメントを2つの類型に分けています。

  • 対価型……性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、解雇、降格、減給、契約更新の拒否などの不利益を受けること
  • 環境型……性的な言動により就業環境が不快なものとなり、就業する上で見過ごせない程度の支障が生じること

根拠は男女雇用機会均等法で、パワハラとは別の法律です。ただし相談先は同じです。

カスハラ:2026年10月から事業主の対策が義務づけられる

顧客や取引先などからの著しい迷惑行為が、カスタマーハラスメントです。2026年10月1日から、事業主に防止措置が義務づけられます。

これは働く側から見ると、会社に対応を求める根拠ができるということです。顧客からの行為だから会社は関係ない、とはならなくなります。

「職場いじめ」という言葉と、法律上の区分のずれ

「いじめ」は法律上の用語ではありません。ただし行政の相談では「いじめ・嫌がらせ」という区分で集計されています。

厚生労働省の集計では、民事上の個別労働紛争の相談のうち「いじめ・嫌がらせ」は55,614件でした。14年連続で最も多い区分です。

なおこの件数に、パワハラ防止法に基づいて対応された相談は含まれていません。実際はこれより多くなります。

呼び方が「いじめ」であっても、内容が6類型に当てはまるなら、パワハラとして相談できます。

※ 参考元:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」/厚生労働省「あかるい職場応援団」/厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」

ここまでは、受けている行為をどう位置づけるかの話でした。次は、実際にハラスメントを受けた方がどう動いたのかを、調査データから見ていきます。

人と関わる場面そのものを減らしたいと考えている場合は、「人と関わらない仕事」で職種の選び方を扱っています。

【データ】職場のハラスメントを受けた方が、実際に取った行動

厚生労働省の実態調査では、パワーハラスメントを受けた方の36.9%が「何もしなかった」と回答しています。社内の相談窓口に相談した方は4.5%で、会社を退職した方(14.9%)の3分の1以下でした。

動けないまま時間が過ぎている方は、めずらしくありません。まずは、ほかの方が実際にどう動いたのかを見てみます。

取った行動割合
何もしなかった36.9%
家族や社外の友人に相談した19.3%
社内の同僚に相談した18.3%
社内の上司に相談した17.9%
会社を退職した14.9%
しばらく会社を休んだ8.5%
人事部等の社内の担当部署(相談窓口を除く)に相談した5.2%
会社とは無関係の医師やカウンセラーなどに相談した4.8%
社内の相談窓口に相談した4.5%
公的な機関(労働基準監督署や都道府県労働局など)に相談した3.1%
会社が設置している社外の相談窓口に相談した2.8%
社内の産業保健スタッフ(産業医、保健師、看護師等)に相談した2.7%
会社とは無関係の弁護士や社会保険労務士に相談した2.1%
労働組合に相談した1.4%

※ 複数回答のため、合計は100%になりません(対象:パワーハラスメントを受けたと回答した方 n=1,546)。選択肢のうち「その他」(1.9%)は省いています。

4割近くが「何もしなかった」

最も多かった回答は「何もしなかった」で36.9%でした。

次いで多いのは「家族や社外の友人に相談した」19.3%、「社内の同僚に相談した」18.3%、「社内の上司に相談した」17.9%です。相談先として選ばれているのは、制度よりも身近な人でした。

何もしなかったからといって、何も感じていないわけではありません。同じ調査で心身への影響を聞いた設問では、「怒りや不満、不安などを感じた」が68.5%でした。「仕事に対する意欲が減退した」も61.1%を占めています。

なお「何もしなかった」の割合は、セクシュアルハラスメントでは51.7%と、さらに高くなっています。顧客等からの著しい迷惑行為では35.2%でした。ただし顧客等からの行為では「社内の上司に相談した」が38.2%で最も多く、社外からの行為のほうが社内で言い出しやすい形になっています。

社内の相談窓口を使った方は4.5%。退職した方はその3倍以上

制度として用意されている窓口の利用率は、いずれも低い水準にとどまりました。

  • 社内の相談窓口に相談した……4.5%
  • 人事部等の社内の担当部署に相談した……5.2%
  • 公的な機関に相談した……3.1%
  • 会社が設置している社外の相談窓口に相談した……2.8%

一方で「会社を退職した」は14.9%でした。社内の相談窓口を使った方の3倍以上です。

社内の相談窓口を利用した割合より、会社を退職した割合のほうが高い結果となっています。

当社が30代700人に行った調査でも、転職を考えた理由として人間関係が上位に挙がっていました。

ただしこの14.9%には、退職後に転職や再就職をした方のみが含まれます。調査の時点で働いていない方は対象に入っていません。

何もしなかった理由の最多は「何をしても解決にならないと思ったから」

何もしなかった方にその理由を聞いた設問では、「何をしても解決にならないと思ったから」が65.6%で最も多くなっています。

これは我慢や諦めというより、見通しの問題です。動いた先に何が起きるのかが分からないことが、最初の一歩を止めています。

会社が知ったあと「特に何もしなかった」が53.2%

会社がハラスメントを認識していたかどうかについては、「認識していた」が37.1%でした。

そして会社が知ったあとの対応として最も多かったのは「特に何もしなかった」で53.2%です。ハラスメントがあったかどうかの判断についても、「あったともなかったとも判断せずあいまいなままだった」が61.4%を占めています。

ただし、動かない会社ばかりというわけではありません。同じ設問では、要望を聞いたり問題の解決のために相談にのったという回答が24.4%、事実確認のためのヒアリングを行ったという回答が18.0%ありました。

なお、ここまでの4つの割合は、いずれも「会社が認識していた」と答えた方の中での数字です。会社が知っていたケースに限っても、半数以上で対応が取られていなかったことになります。

一方で、相談したことを理由に、解雇や降格などの不利益な取扱いを受けたという回答も6.1%ありました。こうした取扱いは法律で禁じられていますが、禁じられていることと、起きないこととは別です。相談をためらう理由としては、無理のないものだと考えられます。

ちなみに、顧客等からの著しい迷惑行為について会社が「認識していた」割合は59.2%で、半数を超えています。社外からの行為に比べ、社内で起きたことのほうが会社に把握されにくい状況がうかがえます。

動かない可能性もあることを織り込んでおくと、次に何を準備すればよいかが見えてきます。

※ 参考元:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」/UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職サイト・エージェントのリアル」

会社が動かない可能性があるのなら、こちら側に事実が残っているかどうかが効いてきます。次は、相談する前にできる記録の残し方を見ていきます。

動きたいと思いながら言い出せない状態が続いている場合は、「「仕事辞めたい」が言えない時の解決策5つ」もあわせてご覧ください。

動く前に記録を残す|パワハラの証拠として何を、どう残すか

相談に証拠は必須ではありません。ただし「いつ・どこで・誰が・何を・誰が見ていたか」の5点を書き残しておくと、あとから事実確認がしやすくなります。

記録は、相談するための条件ではありません。前の章で見たとおり、会社がハラスメントの有無を「あったともなかったとも判断せずあいまいなままだった」割合は61.4%でした。あいまいなままになりやすいからこそ、自分の手元に事実が残っていることが効いてきます。

記録は、あとから自分が状況を思い出すための道具だと考えてください。時間が経つほど、日付や言われた言葉は薄れていきます。

残すのは「いつ・どこで・誰が・何を・誰が見ていたか」の5点

特別な様式は必要ありません。手帳でも、スマートフォンのメモでも構いません。出来事が起きた日に、次の5点を書いておきます。

残すもの内容
いつ日付と、分かればおおよその時刻
どこで会議室、電話、チャットなど、その場所や手段
誰が相手の氏名と役職
何を言われた言葉や取られた対応を、できるだけそのままの表現で
誰が見ていたか同席していた方の氏名

4つ目の「何を」は、要約せずに書くほうがあとで役に立ちます。「ひどいことを言われた」ではなく、実際に出た言葉をそのまま残しておくということです。

そのとき自分がどう感じたかも書いて構いません。ただし、起きた事実と、自分の受け止めは行を分けておくと、あとから読み返したときに整理しやすくなります。

すべての出来事を漏れなく残す必要はありません。思い出せる範囲で構いませんし、書けていない日があっても、それだけで記録の意味がなくなるわけではありません。

メール・チャット・業務日報は、あとから集めにくい

文面が残っているものは、あとから手元に置いておけると安心です。退職や異動でアカウントが使えなくなると、それまで見られていたやりとりに戻れなくなることがあるためです。社内システムのログにも保存期間があります。

残し方は、印刷でも、画面の写真でも構いません。日付と送信者が画面に写る形にしておくと、あとで並べ直すときに探しやすくなります。

業務日報、勤怠の記録、シフト表なども、その日に何があったかを裏づける材料になります。残業が続いていた時期や、急に担当を外された時期は、こうした記録のほうにはっきり出ることがあります。

ただし、会社の情報を外に持ち出すことは、就業規則で制限されている場合があります。自分が受けた言動に関わる範囲にとどめ、顧客の情報や業務上の機密を含めないようにしてください。

体調の変化も記録として意味を持つ

眠れない、食欲がない、出勤前に動悸がする。そうした変化が続いている場合は、いつごろから出ているか、どんなときに強くなるかを書いておきます。出来事の記録と並べると、何が起きていたのかが見えやすくなります。

なお、体調に変化が出ている場合の受診は、記録を作るためのものではありません。つらい状態が続いているのであれば、それ自体が医療機関にかかる理由になります。受診した結果として記録が残る、という順序です。

録音については、扱いが分かれるため慎重に判断する

録音は、事実確認の材料として扱われた例がある一方で、就業規則で職場での録音を禁じている会社もあります。禁じられている職場で録音した場合、そのこと自体が別の問題として扱われることがあります。

判断がつかない場合は、録音する前に、相談する予定の窓口に扱いを確認する方法もあります。次の章で紹介する公的な相談窓口でも、こうした確認は受け付けています。

録音がないと相談できない、ということはありません。先ほどの5点のメモがあれば、話を始めるには十分です。

※ 参考元:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」

記録がある程度そろってきたら、次はどこに持っていくかです。相談先は、社内の窓口だけではありません。

パワハラの相談先は社内だけではない|公的な窓口という選択肢

職場のパワハラは、社内の窓口だけでなく、全国378か所の総合労働相談コーナーに匿名・無料で相談できます。社内から始めるか社外から始めるかは、状況によって選べます。

前の章で見た「社内の相談窓口に相談したのは4.5%」という数字は、窓口が役に立たないという意味だけを表しているわけではありません。社内以外にも入口があること自体が知られていない、という面もあります。

社内で言える相手が思い当たらない場合は、社外から始めても構いません。

相談先できること費用匿名向いている状況
社内の相談窓口・人事事実確認、行為者への対応、
配置転換
無料職場による社内に信頼できる担当者がいる
総合労働相談コーナー
(労働局・労基署など全国378か所)
労働問題全般の相談。
担当部署への取り次ぎ
無料どこに相談すればよいか
分からない
都道府県労働局
雇用環境・均等部(室)
パワハラ防止法に基づく
助言・指導、調停
無料社内に相談したが動かない
産業医・産業保健スタッフ
(50人未満は地域産業保健センター)
健康相談、就業上の措置
についての意見
無料
(地域窓口は原則無料)
心身の不調が先に出ている
こころの耳
(厚生労働省)
メンタルヘルス相談
(電話・SNS・メール)
無料名乗らずに相談したい
みんなの人権110番
(法務省)
人権侵害の相談。
調査・救済手続へ
相談無料
(通話料は有料)
侮辱や差別を含んでいる
法テラス
(日本司法支援センター)
相談窓口の案内。条件を
満たせば無料法律相談
案内は無料。
無料法律相談は
収入・資産の条件あり
法的な手段を検討する段階

※ 電話番号・受付時間は本文中に記載しています(2026年8月時点)。

社内の相談窓口・人事に相談する(体制の整備は事業主の義務)

労働施策総合推進法は、ハラスメントの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備を、事業主に義務づけています。窓口の設置はその方法の1つで、規模を問わずすべての事業主が対象です。

社内に相談する利点は、就業環境そのものに手を入れられる点です。行為者への対応や配置転換を決められるのは社内だけだからです。

同法は、相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。ただし前の章で見たとおり、実際に不利益な取扱いを受けたという回答は6.1%ありました。禁止されていることと、起きないこととは同じではありません。社内から始めるかどうかは、この点を含めて決めていただいて構いません。

「労基署に言えば会社を指導してもらえる」わけではない

労働基準監督署は、労働基準法などの違反を扱う機関です。賃金の未払いや違法な長時間労働はここが担当しますが、パワハラそのものについて会社を是正・指導する権限は持っていません。

パワハラ防止法にもとづく助言・指導や勧告を行うのは、都道府県労働局(雇用環境・均等部室)です。労基署がパワハラに関係するのは、次の2点にとどまります。

  • 総合労働相談コーナーが、労働基準監督署の中にも設置されている
  • 精神障害などで労災を請求する場合の窓口である

労基署に行くこと自体が無駄になるわけではありません。ただし「労基署に言えば会社が指導される」という理解のままだと、期待した対応は返ってきません。

総合労働相談コーナー:匿名・無料で全国378か所

総合労働相談コーナーは、あらゆる労働問題の相談を受け付ける窓口です。都道府県労働局、労働基準監督署、駅の近隣の建物などに全国378か所あります(2026年4月1日現在)。専門の相談員が対応し、費用はかかりません。匿名でも相談できます。

2025年度の総合労働相談は119万8,010件で、18年連続の100万件超です。うち民事上の個別労働関係紛争では「いじめ・嫌がらせ」が55,614件で14年連続の最多でした。

ここでできるのは、状況を聞き取り、どの制度や部署につなぐのが適切かを整理してもらうことです。会社への対応を直接決める場ではありませんが、最初の入口になります。

訴える前にできること|都道府県労働局長による助言・指導と調停

社内に相談しても動かなかった場合は、都道府県労働局に解決の援助を求められます。厚生労働省は、パワーハラスメントについても、労働局長による助言・指導や調停による紛争解決援助を行うとしています。

  • 助言・指導……労働局長が当事者に必要な助言・指導を行い、話し合いによる解決を促すもの
  • 調停……調停委員が公平な第三者として当事者の間に立ち、双方が納得できる解決を図るもの

いずれも費用はかからず、窓口は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。

解決を保証する仕組みではありませんが、社内で止まっている状態を外から動かせる可能性はあります。

その先を考える段階であれば、弁護士への相談も選択肢になります。費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)に案内があります。サポートダイヤルは0570-078374、平日9時から21時と土曜9時から17時です。収入と資産が一定の基準以下であれば、同じ問題について3回まで無料の法律相談を使えます。

心身の不調が先に出ている場合は、産業医・医療機関を先に

眠れない、食欲がない、出勤前に体が動かない。そうした変化が出ている場合は、制度の手続きより先に体調のほうを見てください。

常時50人以上の労働者がいる事業場には、産業医の選任が義務づけられています。50人未満の事業場で働く方は、地域窓口(地域産業保健センター)を原則無料で使えます。医師や保健師が健康管理やメンタルヘルスの相談に応じています。

社内の人に話すこと自体が負担であれば、厚生労働省の「こころの耳」があります。電話・SNS・メールの窓口を匿名・無料で使えます。電話は0120-565-455、月曜から金曜の17時から22時と、土日の10時から16時です(祝日・年末年始を除く)。

職場での出来事が人権侵害にあたると感じる場合は、法務省の「みんなの人権110番」もあります。電話は0570-003-110、平日8時30分から17時15分まで、相談は無料です(通話料はかかります)。

※ 参考元:厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」/厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」/厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」/独立行政法人労働者健康安全機構「地域窓口(地域産業保健センター)」/法務省「常設相談所(法務局・地方法務局・支局内)」/日本司法支援センター(法テラス)

ここまでは、いまの職場にいながらできることを見てきました。それでも会社が動かなかったとき、手元には何が残るのかを次に整理します。

眠れない状態が続いているなど、不調が先に出ている場合は、「適応障害とは?仕事が原因で発症する理由と、休職・転職の判断基準」で受診と休職の考え方を扱っています。

会社が動かなかったときに、手元に残る選択肢

会社が動かない場合に残る選択肢は、部署異動・休職・退職の3つです。原因が特定の上司との関係にある場合は異動で解決することがありますが、会社の体質そのものにある場合は解決しにくくなります。

相談しても状況が変わらなかったとき、次に何をすればよいのかは見えにくくなります。ここでは3つを並べて、どれがどういう状態に向いているかを整理します。どれかを勧めるためのものではありません。

選択肢①:部署異動を求める

行為者が特定の上司や同僚に限られている場合、物理的に離れることで状況が変わることがあります。異動は、いまの会社に残りながら環境を変えられる方法です。

申し出る先は、人事部門か、行為者以外の上長になります。前章で残した記録が、ここで説明の材料になります。

ただし異動が実現するかどうかは会社の判断です。組織の規模によっては、離れられる部署がそもそもない場合もあります。また、同じ行為が別の部署でも起きている場合は、離れても同じ状況に戻る可能性があります。

選択肢②:休職して距離を取る

体調に変化が出ている場合は、休職という選択肢があります。厚生労働省の調査では、パワハラを受けた後に「しばらく会社を休んだ」方は8.5%でした。

休職するかどうかの判断は、ご自身だけで決めるものではありません。医師の診断にもとづいて決めていくことになります。適応障害など、仕事が原因で起きる不調と休職の判断については、別の記事で詳しく扱っています。

収入については、健康保険の傷病手当金の対象になる場合があります。業務外の病気やケガで働けない状態が対象で、支給開始日から通算1年6か月が上限です。支給には、連続する3日間を含む4日以上休んでいることなどの条件があります。

選択肢③:退職・転職を検討する

同じ調査で「会社を退職した」と答えた方は14.9%でした。社内の相談窓口を使った方(4.5%)の3倍以上にあたります。

会社の体質そのものに原因がある場合、社内で異動しても状況が変わらないことがあります。ハラスメントが特定の人ではなく職場全体の慣習として続いている場合が、これにあたります。

退職を選ぶ場合、面接や履歴書で理由をどう伝えるかが次の課題になります。ハラスメントを受けたことをそのまま書くべきか迷われる方が多い部分です。この点は、あとで挙げる記事で扱っています。

3つを比べるときの4つの観点

3つの選択肢は、次の4つの観点で見ると違いがはっきりします。

観点異動を求める休職する退職・転職する
解決できる原因の種類特定の上司や同僚との関係原因の解決ではなく、距離と時間を取る会社の体質そのもの
動き出すまでの期間会社の判断による。
次の異動時期まで待つこともある
医師の診断があれば比較的早い転職活動の期間が必要
収入への影響原則として変わらない就業規則による。
傷病手当金の対象になる場合がある
次が決まるまで空白が出ることがある
元に戻せるか同じ会社に残る復職を前提とした制度元に戻すことは難しい

「逃げ」かどうかで決めない

職場を離れることを、逃げだと感じてしまう方は少なくありません。ただ、受けている状態が心身に及ぼす影響は、実際には小さくありません。

同じ調査では、ハラスメントを受けたことで「怒りや不満、不安などを感じた」が68.5%、「仕事に対する意欲が減退した」が61.1%でした。

制度の上でも、パワーハラスメントは重く扱われる出来事の1つです。

精神障害の労災では、発症の原因になった出来事が種類ごとに整理されます。その区分の1つが「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」です。2025年度にこの区分で決定が出たのは403件で、そのうち222件が支給決定されました。

業務が原因として決定が出た精神障害全体では、3,839件のうち支給決定は1,082件です。一方、出来事が「上司とのトラブルがあった」と整理された場合は、1,061件のうち36件にとどまります。

  • パワーハラスメントを受けた……403件中222件(55.1%)
  • 精神障害全体(業務災害)……3,839件中1,082件(28.2%)
  • 上司とのトラブルがあった……1,061件中36件(3.4%)

出来事の類型によって支給決定の割合に差があることは分かりますが、個別の事案は具体的な内容に基づいて判断されます。受けている内容を、自分の中で小さく言い換える必要はありません。

3つのうちどれを選ぶかは、原因がどこにあるかで変わります。いま決めきれなくても構いません。

※ 参考元:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」/厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』」表2-8/全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

選択肢を比べるうえでは、次の職場で同じことが起きないかも気になるところです。最後に、求人や面接の段階で確認できることを整理します。

休職を考える段階であれば、「適応障害とは?仕事が原因で発症する理由と、休職・転職の判断基準」に判断の流れをまとめています。辞めるかどうかで迷っている場合は「仕事の辞めどきとなる14のサイン」をご覧ください。

面接や履歴書での伝え方は、「【面接での退職理由】ネガティブになりがちな退職理由を好印象に伝える6つのおすすめテクニック」で扱っています。

次の職場でくり返さないために、確認できること

ハラスメントの相談に応じるための体制を整えることは、事業主の義務です。ただし窓口があるかどうかより、それが実際に使われているかどうかのほうが、働きやすさに直結します。

窓口の「有無」ではなく「運用実態」をどう確かめるか

前に見たとおり、会社がハラスメントを知った後の対応で最も多かったのは「特に何もしなかった」で53.2%でした。有無の判断についても「あったともなかったとも判断せずあいまいなままだった」が61.4%を占めています。

いずれも、会社がハラスメントを認識していたケースの中での割合です。知られていなかったから動かなかった、という話ではありません。窓口があること自体は、それが機能していることを意味しません。

窓口の有無は最低ラインとして押さえたうえで、その先を確かめることになります。応募する側が外から見られる範囲で、手がかりになるのは次の3点です。

  • ハラスメント防止の方針や相談体制を、採用ページや行動規範などで公表しているか
  • 管理職向けの研修を、継続して実施しているか
  • その内容が、離職率や勤続年数と食い違っていないか

3つ目が要になります。方針も研修も掲げているのに人が定着していない場合、掲げていることと実際の運用が離れている可能性があります。

逆に、方針の公表も研修の記載も見当たらない会社は、体制の整備が後回しになっている可能性を織り込んでおいたほうがよい、ということになります。

離職率と勤続年数は、求人票の外側から確かめられる

若者雇用促進法にもとづく職場情報の提供制度では、新卒者等の求人を出す企業に対し、応募者から求めがあった場合の情報提供が義務づけられています。

提供される情報は3つの区分に分かれています。

区分内容
募集・採用の状況直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数、平均勤続年数など
職業能力の開発・向上への取組研修の有無と内容、メンター制度の有無など
職場への定着の取組前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数など

ただしこの制度の対象は、新卒者等の求人です。中途採用では同じ義務がかからないため、同じ情報がそのまま出てくるとは限りません。

それでも、新卒採用も行っている会社であれば、採用ページに同じ内容が掲載されていることがあります。掲載がない場合は、次の面接で聞くことになります。

面接で聞ける質問と、聞いても分からないこと

面接で確かめられるのは、制度として存在しているかどうかの部分です。配属予定の部署が決まっている場合は、その部署に絞って聞くと答えが具体的になります。

  • ハラスメント防止の研修は、どのくらいの頻度で実施していますか
  • 相談窓口は社内ですか、社外の窓口も用意されていますか
  • 直近3年で、配属予定の部署から何名くらいが退職されていますか

一方で、面接では分からないこともあります。実際の人間関係や、個々の上司の振る舞いは、入ってみないと見えません。この点を完全に見抜く方法はない、というのが正直なところです。

見抜けなかったとしても、それは見る目がなかったということではありません。確かめられる範囲で確かめておく、というのが現実的なところです。

※ 参考元:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」/厚生労働省「職場情報の提供制度(若者雇用促進法)」

求人票や面接から会社の実態を読み取る方法は、「ブラック企業の特徴10個と見分け方」で詳しく扱っています。

働きやすい会社側の条件は、「ホワイト企業の特徴10選」をあわせてご覧ください。

【Q&A】職場のパワハラに関するよくある質問

Q1. これってパワハラですか?自分では判断がつきません

職場でのその行為がパワハラかは、厚生労働省が示す3つの要素を満たすかで判断します。

3つとは、優越的な関係を背景としていること、業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、労働者の就業環境が害されていることです。3つがそろう場合は、該当する可能性があります。

ただし、自分で結論づけてから動く必要はありません。判断がつかないまま相談しても構いません。

Q2. 上司の指導が厳しいだけかもしれません。パワハラとの違いは何ですか

業務上必要かつ相当な範囲で行われる指導は、パワーハラスメントには当たらないとされています。

分かれ目になるのは、業務上の必要性と、その手段が相当かどうかです。判断の材料になるのは、人格を否定する言葉が含まれていないか、他の人がいる場で繰り返されていないか、改善の機会が与えられているか、といった点です。

1回の出来事だけで決まるものではなく、回数や継続性も考慮されます。

Q3. 証拠がないと相談できませんか

証拠がなくても相談はできます。ただし記録が残っているほど、事実確認は進みやすくなります。

残しておくとよいのは「いつ・どこで・誰が・何を・誰が見ていたか」の5点です。手帳やスマートフォンのメモで構いません。言われた言葉は、要約せずにそのまま書いておくほうが、あとで役に立ちます。

Q4. 相談したら、会社から不利益な扱いを受けませんか

相談を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されていますが、実際に起きた例も報告されています。

厚生労働省の調査では、会社がハラスメントを認識していたケースのうち、相談したことを理由に解雇や降格などの不利益な取扱いを受けたという回答が6.1%ありました。禁止されていることと、起きないこととは別だと考えておいたほうが確実です。

だからこそ、やりとりの記録を残しておくことに意味があります。社内での相談に不安がある場合は、社外の窓口から始めることもできます。

Q5. 会社に相談しても動いてくれません。次はどこに相談できますか

都道府県労働局の総合労働相談コーナーに、匿名・無料で相談できます。全国378か所にあります。

都道府県労働局、労働基準監督署、駅の近隣の建物などに設置されており、専門の相談員が対応します。

会社に対応を求める段階であれば、都道府県労働局長による助言・指導と、調停という方法があります。助言・指導は解決の方向を示して自主的な解決を促すもの、調停は第三者が間に入って話し合いによる解決を図るものです。いずれも費用はかかりません。

Q6. 職場いじめは、ハラスメントに当たりますか

職場でのいじめや嫌がらせは、内容によっては3つの要素を満たし、6類型のいずれかに当てはまる場合があります。

「いじめ」は法律上の用語ではありません。ただし行政の相談区分では「いじめ・嫌がらせ」として集計されており、2025年度は55,614件で14年連続の最多でした。

呼び方が違うだけで、対象から外れるわけではありません。

Q7. ハラスメントが理由で辞めるのは、逃げになりませんか

パワーハラスメントを受けた方の14.9%が退職しています。逃げではなく、選択肢の1つです。

残る選択肢は退職だけではありません。部署異動を求める、休職して距離を取る、という方法もあります。どれが向いているかは、原因が特定の相手との関係にあるのか、職場の体質そのものにあるのかで変わります。

辞めるべきとも、辞めないほうがよいとも言えません。判断の材料をそろえたうえで、決めていただく部分です。

Q8. パワハラで会社や上司を訴えることはできますか

訴えることはできますが、その前に労働局の助言・指導や調停という方法もあります。

労働局の手続きは費用がかからず、訴訟に比べて短い期間で終わることが多いとされています。

訴訟を検討する場合は、弁護士への相談が必要になります。費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)に案内があります。収入と資産が一定の基準以下であれば、無料の法律相談を利用できます。

※ 参考元:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」/厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」/日本司法支援センター(法テラス)

まとめ

職場でのその行為がパワハラかは、優越的な関係・業務上必要かつ相当な範囲を超えている・就業環境が害されている、の3つを満たすかで判断します。

最後に、この記事で扱った内容を振り返ります。

この記事で取り扱ったこと
  • 判断は3つの要素と6つの類型で行う。1人で結論を出してから動く必要はない
  • 記録は「いつ・どこで・誰が・何を・誰が見ていたか」の5点。証拠は相談の条件ではない
  • 相談先は社内の窓口だけでなく、総合労働相談コーナーや労働局の助言・指導、調停がある
  • 会社が動かなかった場合に残るのは、異動・休職・退職の3つ。どれかが正解ではない

厚生労働省の調査では、パワハラを受けた方の36.9%が何もしないまま終えていました。動けないまま時間が過ぎることは、めずらしいことではありません。いま何かを決めなければならない、ということもありません。

体調に変化が出ている場合は、そちらを先に見てください。誰にも言えない状態が続いているのであれば、全国378か所の総合労働相談コーナーや、厚生労働省の「こころの耳」を匿名・無料で使えます。名乗らずに、状況を話すところから始められます。

どの選択肢を取るかは、原因が特定の相手との関係にあるのか、職場の体質そのものにあるのかによって変わります。その切り分けの材料として、この記事を使っていただければと思います。

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