試用期間中の解雇は不当?認められるケースと対処法・もらえるお金を解説

試用期間だからという理由だけで、解雇されても仕方がないと考えている人は少なくありません。しかし、試用期間中であっても、会社が自由に解雇できるわけではありません。

労働者は入社初日から法律で保護されており、不当な解雇であれば、撤回や金銭の請求ができる可能性があります。

試用期間中の解雇は珍しいトラブルではなく、正しい知識があれば冷静に対応できます。

本記事では、解雇が不当になるケースと正当と認められるケースの違い、会社都合退職や失業保険の扱い、請求できるお金の種類、そして解雇を告げられたときの具体的な対処法までわかりやすく解説します。

まずは、自分のケースが不当解雇にあたらないか確認していきましょう。

株式会社ウェヌシス代表取締役 成田大輝様

株式会社ウェヌシス代表取締役
成田大輝

株式会社ウェヌシス代表取締役として、ひとり情シス・兼任情シスなど多忙な担当者の知識アップデートをサポートする研修事業を手掛ける。自身も2度の転職経験を持ち、その体験を活かして年間100本以上の転職・キャリア記事を執筆。実務体験に基づく教育と執筆活動で、IT分野の人材育成とキャリア形成を後押ししている。

保有資格

  • 情報技術能力検定試験 2級
  • MOS Excel 2016
  • ITパスポート試験
  • 基本情報技術者試験
  • 情報セキュリティマネジメント試験
目次

試用期間中でも会社は自由に解雇できない

試用期間はお試し期間のため、会社が労働者に適性がないと判断すれば自由に辞めさせられるイメージを持たれがちです。しかし、試用期間が始まった時点で、会社と労働者の間にはすでに正式な労働契約が成立しています。

そのため解雇するには、試用期間を設けた趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要です。

ここからは、試用期間の法的な位置づけ、解雇に歯止めをかけるルール、解雇をめぐるトラブルの実態の3つの観点から、その根拠を確認していきます。

試用期間の法的性質は「解約権留保付労働契約」

試用期間の法的性質は、最高裁判所の判例で「解約権留保付労働契約」と位置づけられています。

※参考:弁護士法人長瀬総合法律事務所「試用期間中の解雇は不当か?「お試し」ではない法的意味と対処法 」

解約権留保付労働契約は、採用の時点で労働契約はすでに成立しているものの、会社が契約を解約する権利をあらかじめ留保している状態のことです。

採用選考の段階だけでは、労働者の能力や勤務態度といった適格性を完全に把握することは困難です。そこで一定の観察期間を設け、その期間中に従業員として不適格であると判断した場合に限り、会社が労働契約を解約できるという仕組みになっています。

重要なのは、留保されているのはあくまで「解約権」であり、契約そのものが未成立なわけではない点です。したがって労働者は、試用期間中であっても入社初日から労働者としての法的保護を受けます。

会社が留保解約権を行使できるのは、採用時には知ることができなかった事実が試用期間中に判明し、引き続き雇用しておくことが適当でないと客観的に判断できる場合に限られます。

試用期間中の解雇にも解雇権濫用法理が適用される(労働契約法16条)

試用期間中の解雇にも、労働契約法第16条の解雇権濫用法理が適用されます。解雇権濫用法理では、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効になると定めています。

※参考:e-Gov法令検索「労働契約法」

試用期間中は通常の解雇よりも広い範囲で解雇の自由が認められていますが、それは無制限という意味ではありません。具体的には、以下のような解雇は無効と判断される可能性が高くなります。

  • 「会社に向いていない」といった抽象的・主観的な理由による解雇
  • 指導や注意を行わず、改善の機会を与えないまま能力不足を理由とした解雇
  • 些細なミスを繰り返し取り上げただけの解雇

会社には、勤務態度や能力に問題がある場合でも、まず教育的な見地から指導や注意を行い、改善の機会を与えることが求められます。教育を行わずに解雇に踏み切れば、解雇権の濫用として無効と判断される可能性があります。

解雇に関する労働相談は年間3万件超(厚労省・個別労働紛争解決制度 令和5年度)

解雇をめぐるトラブルは、実際に数多く発生しています。

厚生労働省が公表した「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働関係紛争相談のうち、「解雇」に関する相談は32,943件にのぼり、相談全体の10.5%を占めました

※参考:厚生労働省「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」

民事上の個別労働紛争における主な相談内容の上位は、次のとおりです。

  • いじめ・嫌がらせ:60,113件(19.1%)
  • 自己都合退職:42,472件(13.5%)
  • 解雇:32,943件(10.5%)

解雇は3番目に多い相談内容であり、紛争調整委員会によるあっせん申請でも「解雇」が最多となっています。つまり、解雇の有効性や手続きに納得できない労働者が、年間3万件を超える規模で公的機関に相談しているのが実情です。

試用期間中の解雇に疑問を感じることは特別なことではなく、相談できる窓口も整備されています。

試用期間中の「解雇」と「本採用拒否」は区別される

試用期間中に会社が雇用を終了させる場面は、試用期間の満了を待たずに解雇する「途中解雇」と、期間満了時に正式採用を見送る「本採用拒否」に区別されます。

いずれも法的には解約権留保付労働契約に基づく解約権の行使、つまり解雇にあたります。

ここでは「解雇」と「本採用拒否」の違い、途中解雇のハードルが高くなる理由、そして両者を比較した実務上のポイントを整理していきます。

期間途中の解雇と、満了時の本採用拒否の違い

「解雇」と「本採用拒否」の違いは、雇用を終了させるタイミングです。試用期間を3か月と定めている場合を例にすると、次のように区別されます。

  • 途中解雇:3か月の満了を待たず、期間の途中で解雇するもの
  • 本採用拒否:3か月が経過した段階で、正式な採用を見送るもの

呼び方は異なりますが、本採用拒否も法的には解雇にあたります。会社から「解雇ではなく本採用を見送るだけ」と説明された場合でも、それは留保していた解約権を行使したものであり、解雇権濫用法理の対象となります。

したがって、正当な理由がなければ無効を主張できます。

途中解雇のほうが認められにくい理由

途中解雇が認められにくい理由は、会社が自ら定めた見極め期間を、労働者の同意なく一方的に短縮したことに等しいと評価されるためです。

試用期間は、労働者の資質・性格・能力などを把握し、適性を判断するために設けられた労使間の合意です。その期間を使い切らないまま結論を出す行為は、指導が不十分であり判断が早すぎるとみなされます

実際に、ニュース証券事件では、6か月の試用期間を定めていたにもかかわらず、約3か月で成績不振を理由に解雇した事案について、裁判所は「6か月の試用期間の経過を待たずして行った解雇には、より一層高度の合理性と相当性が求められる」と判示し、解雇を無効としました。

※参考:弁護士法人 咲くやこの花法律事務所「試用期間中の解雇についておさえておくべき注意点を解説」

途中解雇が許容されるのは、業務上横領などの犯罪行為があった場合や、就業規則違反を繰り返しても反省が見られない場合など、試用期間の満了を待つまでもなく適性を著しく欠くと判断できる特段の事情がある場合に限られます。

途中解雇と本採用拒否の比較表(ハードル・手続き・争いやすさ)

途中解雇と本採用拒否について、ハードル・手続き・争いやすさの3つの観点から比較すると、次のように整理できます。

項目途中解雇本採用拒否
ハードル極めて高い。通常の解雇の要件に加え、「より一層高度の合理性と相当性」が求められる(ニュース証券事件)通常の解雇よりは広い範囲で認められる。ただし客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性は必要(三菱樹脂事件)
手続き入社14日以内は解雇予告が不要。15日目以降は30日前の予告または解雇予告手当が必要実質的に解雇と同じ扱い。試用期間満了日を解雇日とする場合も、30日以上前の予告または解雇予告手当が必要
争いやすさ「指導が不十分」「判断が性急すぎる」と主張しやすく、無効となる可能性が高い十分な観察と指導の記録があれば、会社側の判断が認められるケースもある

労働者側の視点で見れば、途中解雇を告げられた場合は無効を主張できる可能性が高いといえます。

一方で本採用拒否であっても、会社が自由に見送れるわけではありません。いずれの場合も、まずは解雇理由を確認し、指導や改善の機会が十分に与えられていたかを振り返ることが重要です。

試用期間中の解雇が不当解雇になる主なケース

試用期間中の解雇は、実際には無効と判断されるケースが少なくありません。

ここでは代表的な3つのパターンを確認したうえで、自分のケースを判断できるセルフ診断チェックリストを紹介します。

十分な指導をせず能力不足を理由とした解雇

能力不足を理由とする解雇のうち、会社が十分な指導・教育を行っていないものは、不当解雇と判断される可能性が高くなります。裁判所は、会社には労働者を指導し育成する責任があるという考え方を前提としているためです。

※参考:弁護士法人 咲くやこの花法律事務所「試用期間中の解雇についておさえておくべき注意点を解説」

特に新卒採用者や未経験者の場合、入社当初は仕事ができなくて当然と評価されます。そのため、短期間の勤務成績や能力不足だけで見切りをつける解雇は、教育責任の放棄とみなされる可能性が高いです。

一方、即戦力として採用された中途採用者であっても、扱いは大きく変わりません。会社が変われば業務の手順も環境も異なるためです。

仕事の進め方そのものに問題がないにもかかわらず、短期間の営業成績など結果の不出来だけを理由に解雇した事案では、成績が改善する余地があり判断がはやすぎるとして、解雇が無効とされています。

弁明の機会を与えない解雇・14日超の予告なし即日解雇

解雇理由そのものだけでなく、手続きに不備がある解雇も無効となり得ます。ポイントは、弁明の機会と解雇予告の2点です。

まず、解雇を行う際には、本人に言い分を述べる機会を与えるなど、適正な手続きを踏むことが必要です。事前の警告や指導もなく、弁明の機会すら与えないまま一方的に解雇を通告するようなケースは、社会通念上の相当性を欠くと判断される要因になります。

次に、解雇予告のルールです。労働基準法第20条により、労働者を解雇する場合は原則として30日前の解雇予告か、30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。

労働基準法の解雇予告義務が免除されるのは、労働基準法第21条により「入社後14日以内の試用期間中の者」に限られます。

※参考:e-Gov法令検索「労働基準法」

したがって、入社から15日目以降に解雇する場合は、試用期間中であっても通常どおり予告か予告手当が必要です。予告なしで即日解雇することは、労働基準法違反にあたります。

妊娠・出産・労災など解雇が禁止される事由

そもそも法律が解雇を禁止している事由もあります。下記のことに該当する場合は、指導の有無や勤務成績にかかわらず不当解雇と判断されるケースが多いです。

  • 妊娠・出産、産前産後休業の取得などを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条)
  • 産前産後の休業期間中およびその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
  • 業務上の傷病による療養で休業している期間およびその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
  • 育児・介護休業の申出や取得を理由とする解雇(育児・介護休業法)
  • 国籍・信条・社会的身分、労働組合への加入などを理由とする解雇

特に注意したいのが妊娠・出産のケースです。妊娠中および出産後1年以内に行われた解雇は、事業主が「妊娠・出産等を理由とする解雇ではないこと」を証明しない限り無効となります。

※参考:e-Gov法令検索「男女雇用機会均等法」

不当解雇セルフ診断チェックリストとチェック数別の対応

自身の解雇が不当にあたるかどうかは、次のチェックリストで大まかに判断できます。当てはまる項目に印をつけてみてください。

  • 「向いていない」「社風に合わない」など、抽象的で客観性のない理由を告げられた
  • 能力不足を理由とされたが、事前の注意や具体的な指導を受けていない
  • 改善のための期間や機会を与えられていない
  • 試用期間の途中で、性急に解雇された
  • 解雇の前に、言い分を聞かれる機会がなかった
  • 入社15日目以降なのに、予告も予告手当もなく即日解雇された
  • 妊娠・出産・育児休業・労災による休業などが関係している
  • 解雇理由を書面で示されていない

いずれの場合も、その場で「分かりました」と答えたり、退職届や合意書に署名したりしないことが重要です。合意退職とみなされると、後から不当解雇として主張することが困難になります。

まずは保留を伝え、解雇理由証明書の請求と証拠の確保をおこなうようにしましょう。

試用期間中の解雇が正当と認められるケース

ここまで不当解雇になるケースを見てきましたが、反対に解雇が正当と認められる場合もあります。

ここでは正当と認められる典型例、採用区分による判断基準の違い、実際の裁判例を確認します。

重大な経歴詐称・度重なる無断欠勤・協調性を欠く言動

試用期間中の解雇が正当と認められるのは、採用時には知ることができなかった、従業員としての適格性を欠く重大な事実が判明した場合に限られます。具体的には、次のようなケースが該当します。

  • 重大な経歴詐称:
    学歴・職歴・専門スキル・重要な資格など、採用の判断に決定的な影響を与える事項について虚偽の申告をしていた場合
  • 度重なる無断欠勤:
    正当な理由なく無断欠勤や遅刻を繰り返し、会社からの連絡にも応じないなど、労務提供の意思がないと客観的に判断される場合
  • 協調性を欠く言動・著しい非違行為:
    職務上の地位を悪用した不正行為、同僚へのハラスメント、業務命令への執拗な拒否など、職場の秩序を著しく乱す言動があった場合

※参考:
弁護士法人長瀬総合法律事務所「試用期間中の解雇は不当か?「お試し」ではない法的意味と対処法」
社会保険労務士・行政書士岩元事務所「試用期間中・入社14日以内の解雇手続き 試用期間の規定方法から解雇手続きの実務まで」

いずれも共通するのは、「指導しても改善が期待できない」「雇用を継続することが客観的に不適当」と評価できる水準に達している点です。

反対に、アルバイト歴をやや長く記載した程度の些細な経歴の相違といった軽いものは、解雇理由として認められないことがあります。自分のケースが重大な事実にあたるのかどうかを冷静に見極めることが重要です。

新卒・未経験と即戦力採用で異なる判断基準

能力不足を理由とする解雇では、裁判所は新卒・未経験者と即戦力採用者とで判断基準をわけています。

新卒・未経験者の場合、裁判所は「はじめは仕事ができないのが当然であり、会社が指導によって育成すべきである」という考え方をとります。

※参考:弁護士法人 咲くやこの花法律事務所「試用期間中の解雇についておさえておくべき注意点を解説」

そのため、十分な指導や改善の機会を与えないまま、仕事の覚えが悪いことだけを理由に解雇や本採用拒否をすれば、不当解雇と判断される可能性が高いです。

一方、即戦力として中途採用された場合は、職務経験を生かした業務遂行が期待されるため、一定の能力が問われます。

ただし、それでもすぐに解雇できるわけではありません。会社が変われば業務手順や環境も異なるためです。仕事の進め方自体に問題がないのに、短期間の営業成績など結果の不出来だけを理由とする解雇は、改善の余地があるとして無効になりやすくなります。

解雇が有効・無効に分かれた裁判例の対比

実際の裁判例を対比すると、判断の分かれ目がより明確になります。

事件名結論事案の概要とポイント
ニュース証券事件(東京高裁 平成21年9月15日)無効営業経験者を中途採用し、6か月の試用期間中わずか3か月強の成績不振で解雇。地道に営業しており改善の見込みがないとはいえず、判断が性急すぎるとされた
日本軽金属事件(東京地裁 昭和44年1月28日)無効遅刻・誤字脱字・命令不服従など勤務態度不良を理由に本採用を拒否。教育によって容易に矯正できる欠点を、何ら矯正せずに解雇理由とすることは許されないとされた
ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス事件(東京地裁 平成31年2月25日)有効経験5年以上を要件に即戦力採用したアナリストが、入社1か月頃から毎営業日のようにミスを重ね、複数回の指導でも有意な改善が見られなかった。即戦力採用の趣旨を前提に、雇用継続は適当でないとの判断に合理性があるとされた
ブレーンベース事件(東京地裁 平成13年12月25日)有効面接でパソコン操作に精通していると述べたが実際には満足に作業できず、顧客の緊急依頼にも速やかに応じないなどの事情から、本採用拒否が認められた

※参考:
弁護士法人 咲くやこの花法律事務所「試用期間中の解雇についておさえておくべき注意点を解説」
全国労働基準関係団体連合会「ブレーンベース事件」

松田総合法律事務所「知らないと損をする労務の基礎知識③~試用期間における本採用拒否の限界編」

無効となった事案では、会社が指導や観察を尽くしていない、あるいは判断が性急であるという共通点があります。

有効となった事案では、採用時の説明と実際の能力が食い違っていたり、指導を重ねても改善が見られなかったりと、会社側が手順を踏んだうえで適格性を欠くと判断しています。

自分のケースがどちらに近いかを確認する際に役立ててみてください。

試用期間中の解雇に必要な手続きは入社14日で変わる

試用期間中の解雇では、理由の正当性だけでなく、手続きが適正に踏まれているかも重要な争点になります。特に押さえておきたいのが、入社から14日という境界線です。

ここでは、解雇予告のルール、予告手当の考え方、そして手続きの不備が解雇の効力に与える影響を確認します。

14日以内は解雇予告が不要、14日超は30日前予告または解雇予告手当(労働基準法20条・21条)

労働基準法第20条により、会社が労働者を解雇する場合は、原則として30日前に解雇予告を行うか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

ただし労働基準法第21条は、労働基準法第20条の例外として「試みの使用期間中の者」を挙げています。その適用の分かれ目が、入社から14日以内かどうかです。

入社からの日数解雇予告・予告手当内容
14日以内不要労働基準法21条の例外が適用され、即日解雇が可能
15日目以降(14日超)必要例外の適用がなくなり、30日前の予告または解雇予告手当が必要

注意点は2つあります。

第一に、14日は入社日を起点とした暦日で数えるため、土日祝日も含まれます。第二に、15日目以降であれば、試用期間の途中であっても通常の労働者と同じルールに戻ります。3か月の試用期間のうち、1か月が経過した時点であっても、予告か予告手当が必要です。

※参考:e-Gov法令検索「労働基準法」

解雇予告手当の計算の考え方

解雇予告手当とは、30日前の予告を行わずに解雇する場合に支払う、30日分以上の平均賃金のことです。ここで押さえておきたいのは、予告日数と手当の支払日数は通算できるという点です。

※参考:弁護士法人 四谷麹町法律事務所「解雇予告義務が適用されない労働者とは?労基法21条の例外と実務上の注意点」

労働基準法第20条第2項は、平均賃金を1日分支払うごとに、予告期間を1日短縮できると定めています。つまり「予告した日数+手当として支払う平均賃金の日数」の合計が30日以上になれば適法です。

※参考:e-Gov法令検索「労働基準法」

具体例で整理すると、次のようになります。

  • 予告なしの即日解雇:30日分以上の平均賃金を支払う
  • 10日前に予告:不足する20日分以上の平均賃金を支払う
  • 20日前に予告:不足する10日分以上の平均賃金を支払う
  • 30日前に予告:予告手当の支払いは不要

自身が受け取った金額が適正かどうかを確認する際は、まず「解雇を告げられた日から解雇日までの日数」を数え、30日に足りない分の平均賃金が支払われているかを照らし合わせてください。

試用期間中の解雇は原則「会社都合退職」になる

解雇された後に気になるのが、生活を支える失業保険の扱いです。結論から言えば、試用期間中の解雇は雇用保険の手続き上、原則として「会社都合退職」として扱われます。

ここでは離職理由の扱い、受給条件と注意点、そして解雇を争う場合の制度を確認します。

解雇・退職勧奨の受け入れは会社都合退職にあたる

解雇は、労働者の意思ではなく会社側から一方的に労働契約を解除するものです。そのため、試用期間中の解雇であっても、通常の解雇と同様に会社都合退職として扱われます

※参考:社会保険労務士・行政書士岩元事務所「試用期間中・入社14日以内の解雇手続き 試用期間の規定方法から解雇手続きの実務まで」

注意したいのが、解雇ではなく「辞めてほしい」と退職を促されるケースです。会社の求めに応じてやむを得ず合意退職した場合でも、離職理由を「事業主による退職勧奨」としてもらうことで、一般的に会社都合による離職と認定してもらえます。

※参考:福井県労働委員会「個別的な労使紛争等の解決のための職場のトラブルQ&A」

一方、会社から退職届の提出を求められて応じると、自己都合とされる恐れがあります。離職票が届いたら、離職理由の記載を必ず確認してください。

事実と異なる場合は、ハローワークに異議を申し立てることができます。

失業保険の受給条件(被保険者期間6か月以上)と短期勤務の注意点

失業保険(基本手当)の受給には、離職理由に応じた被保険者期間の要件があります。

離職理由必要な被保険者期間
一般の離職(自己都合など)離職の日以前2年間に通算12か月以上
倒産・解雇等による離職(特定受給資格者)離職の日以前1年間に通算6か月以上

※参考:ハローワーク「基本手当について」

解雇された場合は特定受給資格者にあたるため、要件が6か月に緩和されます。ただし、試用期間は3か月程度が一般的なため、その会社の加入期間だけでは6か月に届かないケースが少なくありません。

新卒入社で前職がない人や、前職から間が空いている人は、会社都合であっても受給できない可能性があります。まずは離職票を持ってハローワークで確認してください。

解雇を争う間に使える「失業保険の仮給付」

不当解雇を争う場合、労働者は「解雇は無効であり、自分はまだ従業員である」と主張しますが、失業保険を受給することは、失業した事実を認めることになり、主張と矛盾してしまいます。

しかし、係争中は給与が支払われず、生活に支障をきたす人も少なくありません。

そこでハローワークでは、実務上の運用として「仮給付」と呼ばれる取り扱いを行っています。解雇の有効性を争っている事実を示す書類を提出することで、仮に基本手当を受給できる仕組みです。

※参考:残業代請求・弁護士相談広場「不当解雇の紛争中でも受けられる「失業保険の仮給付」」

手続きに使用できる書類は、以下のとおりです。

  • 訴状
  • 労働審判の申立書
  • 労働委員会によるあっせんの申立書
  • 内容証明郵便による通知書

返還の要否は、係争の結果によって変わります。解雇が無効となって復職した場合や、解雇が撤回されたうえで未払い賃金・和解金を受け取った場合は、その期間は失業していなかったことになるため、受け取った仮給付を返還します。

一方、解雇が正当と認められた場合や、当初の解雇日に退職した形で和解した場合は、失業が確定するため返還は不要です。

試用期間中の解雇で請求できるお金は4種類

不当な解雇を受けた場合、労働者が請求できる請求できる金銭は1種類ではありません。状況に応じて、解雇予告手当・未払い賃金・バックペイ・解決金の4種類を請求できます。

ここでは4種類の全体像と、解雇後の賃金、慰謝料の扱いを確認していきましょう。

解雇予告手当・未払い賃金・バックペイ・解決金の一覧表と目安

請求できるお金の4種類を整理すると、次のとおりです。

種類内容金額の目安
解雇予告手当30日前の予告なしに即時解雇された場合に支払われるもの。入社から14日を超えている場合に適用される30日分以上の平均賃金
未払い賃金解雇日までに発生している給与や残業代。サービス残業があれば合算して請求できる実際の未払い額による
バックペイ解雇が無効となった場合に請求できる、解雇日から解決までの間に働いていれば得られたはずの賃金月給×係争期間。長引くほど高額になる
解決金争ったうえで復職せず、和解により退職する代わりに会社が支払うもの月給の3〜6か月分程度が一つの目安

※参考:
弁護士法人四谷麹町法律事務所「労働問題FAQ」
リバティ・ベル法律事務所「不当解雇の解決金相場は?高額になるケース4つと税金【弁護士解説】」

これらは択一ではなく、重ねて請求できる場合もあります。例えば、未払い残業代がある状態で不当解雇されたケースでは、未払い賃金とバックペイを併せて請求することが可能です。

なお、解決金の水準は事案によって大きく変動します。試用期間中の解雇は、通常の解雇に比べて会社側の解約権が広く認められる分、相場も通常より低めになる傾向があります。

あくまで交渉の結果で決まる金額であり、確定した基準ではない点に注意しましょう。

解雇が無効な場合は解雇後の賃金も請求できる

解雇が無効と判断された場合、法的には従業員として継続することになります。労働者には働く意思があったにもかかわらず、会社の不当な解雇によって就労できなかったと評価されるためです。

※参考:リバティ・ベル法律事務所「不当解雇の解決金相場は?高額になるケース4つと税金【弁護士解説】」

解雇が無効と判断された場合、会社は解雇した日から解決までの期間の賃金をさかのぼって支払わなければなりません(バックペイ)。

ポイントは、実際には働いていない期間の賃金であっても請求できる点です。裁判が長引けば、その分だけ支払われるべき賃金は積み上がっていきます。

判決まで至らないケースでも同様です。

和解交渉で「会社が解雇を撤回したうえで、和解の日をもって合意退職とする」という形で決着した場合、解雇日から和解日までは在籍していた扱いになるため、その期間の賃金相当額を受け取れます。

ただし和解は当事者の合意で成立するものであり、金額は満額とは限らず、交渉によって一定割合に調整されることもあります。

※参考:残業代請求・弁護士相談広場「不当解雇の紛争中でも受けられる「失業保険の仮給付」」

慰謝料が認められるケースと認められにくいケース

慰謝料については、認められる範囲が限られる点に注意が必要です。

バックペイや解決金とは別に慰謝料が認められるのは、解雇の態様が悪質で、労働者が大きな精神的苦痛を受けた場合に限られます。慰謝料が認められやすいのは、次のようなケースです。

  • 解雇に至る過程で、上司による悪質なパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントがあった
  • 執拗な退職強要が繰り返された
  • 人格や尊厳を著しく傷つける言動を伴っていた

※参考:弁護士法人長瀬総合法律事務所「試用期間中の解雇は不当か?「お試し」ではない法的意味と対処法」

一方、単に解雇理由の合理性や相当性が不十分で、結果として解雇が無効になったという通常のケースでは、慰謝料は認められにくい傾向があります。解雇によって生じた金銭的な損害は、バックペイや解決金を受け取ることで補填されたとみなされるためです。

したがって、慰謝料を上乗せできるのは、解雇そのものの違法性に加えて悪質な事情が伴う場合に限られます。

解雇を告げられた当日にやるべき3つの対処法

突然の解雇通告に動揺してしまうのは当然ですが、その場での対応が後の結果を大きく左右します。解雇を告られた場合は、以下のことを当日に行いましょう。

  • 解雇理由証明書を請求する(労働基準法22条)
  • 退職届に安易に署名せず、解雇通知や面談内容を記録する
  • 相談先の選び方を確認しておく

解雇理由証明書を請求する(労働基準法22条)

解雇を告げられたら、まず解雇理由証明書を請求しましょう。

労働基準法第22条第2項により、解雇予告を受けた労働者が解雇理由について証明書を請求した場合、会社は遅滞なくこれを交付する義務を負います

※参考:e-Gov法令検索「労働基準法」

予告なく即日解雇された場合は、同条第1項に基づく退職証明書として解雇理由の証明を求めることになります。

請求する目的は以下の2つです。

  • 解雇の正確な理由を把握し、記録として残すため
  • 会社が後から別の解雇理由を追加することを防ぐため

書面で理由が確定していれば、後日不当解雇として争う際、会社側の主張を固定できます。会社に義務がある以上、遠慮する必要はなく、解雇理由証明書を請求しておくようにしましょう。

解雇理由証明書の請求メール文例

請求は口頭ではなく、メールや内容証明郵便など記録に残る形で行うことが重要です。請求した事実そのものが証拠になるためです。次の文例を参考にできます。

件名:解雇理由証明書の請求について

〇〇株式会社
人事ご担当 〇〇様

お世話になっております。〇〇部の〇〇です。

〇年〇月〇日、〇〇課長より解雇を言い渡されました。しかし、その理由について具体的な説明を受けておらず、私には解雇される理由に思い当たる点がございません。

つきましては、労働基準法第22条に基づき、解雇の理由を明確に記載した「解雇理由証明書」の交付を請求いたします。〇月〇日までにご送付くださいますようお願い申し上げます。

なお、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として無効とされます(労働契約法第16条)。合理的な理由がない場合には、解雇の撤回をご検討ください。

〇〇〇〇(氏名・連絡先)

送信後は、送信済みメールを必ず保存してください。会社が交付に応じない場合は、労働基準監督署への相談材料になります。

退職届に安易に署名せず、解雇通知や面談内容を記録する

解雇や退職勧奨を受けた際、退職届に安易に署名しないように注意しましょう。

退職届や退職合意書に一度サインして提出してしまうと、合意退職とみなされてしまいます。執拗に迫られて本意ではなかったとしても、後から「不当解雇だった」「強要された」と主張して取り消すことは困難です。

その場では「持ち帰って考えさせてください」と伝え、保留にしてください。即答を求められても応じる義務はありません。

同時に、次のものを記録として残しておきましょう。

  • 面談での上司や人事の発言内容(日時・場所・出席者とあわせてメモに整理)
  • 面談時の録音
  • 解雇を告げられたメールやチャットの履歴
  • 業務日報、指示メール、成果物など、指導の有無が分かる資料

会社側の指導が不十分だったことを示す資料は、退職後には入手が困難になります。可能な範囲で早めに確保しておくようにしましょう。

相談先の選び方(労働基準監督署・労働審判・弁護士)

相談先は、状況と目的によって使い分けます。

相談先適した場面特徴
労働基準監督署・総合労働相談コーナーまず無料で相談したい、解雇予告手当が支払われない労働基準法違反があれば行政指導を行う。話し合いによる「あっせん」も利用できる
弁護士解雇の撤回や金銭的な解決を本格的に目指したい判例に基づく見通しを立てられる。弁護士名の通知書により、会社が交渉に応じやすくなる
労働審判話し合いで決着がつかない裁判官と専門委員が関与し、原則3回以内の期日で解決を図る。訴訟より短期間で結論が出る

※参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

まず費用をかけずに相談したい場合は、総合労働相談コーナーが最初の相談先として使いやすい窓口です。一方、解雇の有効性そのものを争うのであれば、労働問題の実務経験が豊富な弁護士への相談が現実的です。

※参考:リバティ・ベル法律事務所「不当解雇の解決金相場は?高額になるケース4つと税金【弁護士解説】」

労働審判は訴訟に比べて短期間で結論が出るため、生活を守りながら早期解決や解決金の獲得を目指す人に適しています。

試用期間で辞めた経歴を次の転職に活かすには

試用期間中に解雇されると、経歴が不利に見られて次の転職が難しくなるのではと不安になる人は少なくないでしょう。しかし、伝え方と会社選びを工夫すれば、十分に優良な企業へ転職できる可能性があります。

ここでは履歴書の書き方、面接での説明のしかた、そして同じ失敗を繰り返さないための会社選びについて解説します。

履歴書への書き方と退職理由の伝え方

まず押さえておきたいのは、試用期間中に退職した経歴も履歴書に正直に記載することです。

短期間だから書かなくてもよいと考える人もいますが、雇用保険や社会保険の加入履歴が残るため、入社手続きの際にバレる可能性が高いため注意が必要です。

意図的に隠していたと判断されれば、経歴詐称に発展する可能性もあります。記載方法は通常の職歴と同じで、入社年月と退職年月を記入します。退職理由の書き方は次のとおりです。

  • 解雇された場合:「会社都合により退職」
  • 退職勧奨に応じた場合:「会社都合により退職」
  • 自ら退職した場合:「一身上の都合により退職」

ここで重要なのが、離職票の離職理由と履歴書の記載を一致させることです。会社都合の解雇であるにもかかわらず「一身上の都合」と書いてしまうと、後で説明が食い違います。

面接で短期離職を前向きに説明する例

面接では、短期離職の理由を必ず聞かれると考えておきましょう。ポイントは、会社への批判ばかりにしないことです。

たとえ不当な解雇であっても、前の会社を強く非難する話し方は、面接官に「この人は他責的かもしれない」という印象を与えてしまう可能性があります。

面接では、具体的に次のように伝えるのがおすすめです。

前職では入社後3か月の試用期間中に、会社都合により退職することになりました。業務内容が入社前に伺っていた内容と異なる部分があり、双方の期待にずれが生じてしまったことが要因だと考えています。この経験から、応募段階で業務内容や求められる役割を具体的に確認することの大切さを学びました。御社では〇〇の業務に長く貢献したいと考えており、その点を踏まえて応募いたしました。

事実を認めつつ、原因の分析と今後どのようにしていきたいかを伝えることで、採用担当者から「振り返る力がある人」と評価してもらえる可能性が高くなります。

2024年4月の労働条件明示ルール改正をふまえた次の会社の選び方

同じミスマッチを繰り返さないために、次の会社選びで活用したいのが2024年4月に施行された労働条件明示ルールの改正です。労働基準法施行規則の改正により、労働契約の締結時に明示すべき事項が追加されました。

すべての労働者に就業場所・業務の「変更の範囲」が追加されており、有期契約労働者については、更新上限の有無とその内容、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件が追加されています。

つまり、入社時に「どこで、どんな業務に就く可能性があるのか」を書面で確認できるようになりました。労働条件通知書を受け取ったら、次の点を必ず確認してください。

  • 就業場所と業務の「変更の範囲」が具体的に書かれているか
  • 試用期間の長さと、その間の労働条件が明記されているか
  • 求人票や面接での説明と、記載内容が一致しているか

説明があいまいな企業や、記載と口頭説明が食い違う企業は要注意です。書面で確認する習慣が、転職時のミスマッチを防ぎます。

※参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」

転職エージェントに相談する

試用期間中の解雇を経験した後の転職活動では、転職エージェントの活用が有効です。転職エージェントの利用がおすすめな理由は、以下のとおりです。

  • 短期離職の伝え方を一緒に整理してもらえる
    キャリアアドバイザーは、面接官に納得感を持って伝わる表現を熟知しています。自分一人で考えるより、客観的な視点が入ることで説得力が増します。
  • 企業への事前フォローが期待できる
    エージェント経由の応募であれば、担当者から企業側に事情や人物像を補足してもらえる場合があります。書類選考の段階で、短期離職という事実だけで判断されるリスクを減らせます。
  • 求人票からは分からない社風や実際の業務内容を確認できる
    ミスマッチによる離職を経験した方にとって、内部情報を得られるメリットは大きいといえます。次の会社選びの精度が上がります。

なお、試用期間中の離職について相談する際は、事実を隠さず伝えることが重要です。正しい情報を伝えていなければ、適切な提案を受けられません。

【会社側】試用期間中の解雇を検討するときの注意点

ここまでは労働者側の視点で解説してきましたが、会社側にとっても試用期間中の解雇は法的リスクの高い判断です。

ここでは実際の支払い事例、解雇を有効に進めるための前提、そして解雇以外の選択肢を確認していきましょう。

安易な解雇が高額な支払いにつながった事例

試用期間中であっても、解雇が不当と判断されれば、会社は解雇日から判決までの期間の賃金(バックペイ)などの支払いを命じられます。裁判が長引くほど金額は膨らみ、数百万円規模になることも珍しくありません。

実際に支払いを命じられた主な裁判例は、次のとおりです。

事件名・裁判所支払額事案と会社側の問題点
社労士法人パートナーズ事件(福岡地裁 平成25年9月19日判決)約340万円未経験者と理解したうえで採用した従業員を、顧客への意向確認が不十分だったことなどを理由に解雇。入社直後から即戦力を期待できる状況になく、事前の意向確認を明確に命じた業務命令もなかったとされた
ニュース証券事件(東京地裁 平成21年1月30日判決)約360万円営業経験7年の中途採用者を、3か月の営業成績不振を理由に、6か月の試用期間満了を待たず解雇。営業日誌から地道な活動がうかがえ改善の見込みがないとはいえず、対応が性急にすぎるとされた
設計会社従業員解雇事件(東京地裁 平成27年1月28日判決)約750万円図面作成の経験者として採用した従業員に対し、経験のない橋梁の配筋図作成を命じながら具体的な指示をせず、能力不足を理由に本採用を拒否。時間はかかったものの要求どおり完成させていた点が考慮された

共通するのは、会社が「指導を尽くしたか」を問われている点です。特に3件目は、成果物が完成していたにもかかわらず本採用を拒否した結果、高額な支払いに発展しました。

解雇はコストを削減するどころか、大きな損失を生む判断になり得ます。

※参考:咲くやこの花法律事務所「試用期間中の解雇についておさえておくべき注意点を解説」

途中解雇より本採用拒否、段階的な指導と記録が前提

途中解雇によるリスクを抑えるためには、以下の2点を意識しましょう。

  • 途中解雇ではなく、本採用拒否を原則とする
  • 段階的な指導と客観的な記録を残す

試用期間は、従業員が新しい環境や業務に慣れ、適性を見極めるための期間です。満了を待たずに見切りをつける途中解雇は、必要な指導を行わず判断が性急すぎるとして、不当解雇となる危険性が非常に高くなります。

能力不足を理由とするなら、試用期間を通じて十分に指導し、その結果をもって本採用拒否を判断するのが安全です。

また、新卒・未経験者はもちろん、即戦力として採用した経験者であっても、会社が変われば業務の進め方は異なります。会社には具体的な指示・指導を行う義務があります。加えて、裁判で争いになれば、解雇の合理性は会社側が立証しなければなりません。

問題があった都度、指導や面談を実施し、業務日誌・メール・面談記録・注意書などを日常的に残しておくことが重要です。

解雇前に検討できる選択肢(試用期間の延長・退職勧奨)

一方的な解雇に踏み切る前に、次の2つの選択肢を検討してください。

  • 試用期間の延長
  • 退職勧奨(合意退職)

勤務態度や仕事の進め方から、今後改善する見込みが少しでもあるなら、期間を延長して再度、改善と指導の機会を与える方法があります。ただし、延長は労働条件の重要な変更にあたるため、会社が一方的に決めることはできません。

※参考:社会保険労務士・行政書士岩元事務所「試用期間中・入社14日以内の解雇手続き 試用期間の規定方法から解雇手続きの実務まで」

就業規則や雇用契約書に、延長の可能性と上限期間(通算6か月までなど)をあらかじめ明記し、労働者に周知していることが前提です。そのうえで、延長する合理的な理由を示し、本人に書面で理由と延長後の期間を通知する必要があります。

また、どうしても適性がないと判断される場合は、一方的に解雇を通告するのではなく、本人と十分に話し合い、合意のうえで退職してもらう方法があります。会社の一方的な契約解除である解雇と異なり、後日不当解雇として争われるリスクを大幅に減らせます。

ただし、あくまで本人の自由意思による合意が前提です。応じない相手に執拗に退職を迫ったり、脅すような言動を取ったりすれば、退職強要という違法な権利侵害とみなされる危険があります。

【Q&A】試用期間の解雇に関するよくある質問

Q1:「明日から来なくていい」と言われた場合の扱い

「明日から来なくていい」と言われた場合は、事前の予告を行わない即日解雇にあたります。法的な扱いは、入社からの経過日数によって変わります。
  • 予告や予告手当なしで即日解雇できる場合があります。ただし、解雇理由の正当性は別途必要です。
  • 入社から15日目以降:試用期間中でも通常の解雇予告義務が適用されます。即日解雇とするには30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)が必要で、これを現実に支払って初めて解雇の効力が生じます

※参考:弁護士法人 四谷麹町法律事務所「労働問題FAQ」

つまり15日目以降であれば、予告手当が支払われていない限り、即日解雇としての効力は生じません。

なお、即日解雇された後に理由の証明を求める場合、法律上は解雇理由証明書ではなく、労働基準法第22条第1項に基づく退職証明書として請求することになります。名称は異なりますが、解雇理由を書面で確定させるという目的は同じです。

※参考:弁護士法人 デイライト法律事務所「解雇理由証明書とは?弁護士が注意点を解説【記載例・サンプル付】」

Q2:試用期間中の解雇でも失業保険は受給できるか

加入期間の要件を満たしていれば受給できます。
試用期間中の解雇による離職は、労働者側に重大な責任がある解雇(重責解雇)を除き、雇用保険上は会社都合退職として扱われます。そのため、自己都合退職のような給付制限期間がなく、速やかに基本手当を受給できる可能性があります。
問題になるのは加入期間です。会社都合退職の場合、離職の日以前1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上あることが必要です。試用期間は3か月程度が一般的なため、企業によっては勤務期間が6か月に届きません。
また、不当解雇として争う場合でも、ハローワークで所定の手続きを行えば、生活保障のための仮給付を受けられます。まずは離職票を持って相談してみてください。

Q3:契約社員(有期契約)の試用期間で解雇された場合の違い

有期契約の場合、期間途中の解雇はさらに厳しく判断されます。
労働契約法第17条第1項は、有期労働契約について「やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定めています。
やむを得ない事由は、通常の解雇で求められる客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性よりもハードルが高いです。契約期間を約束した以上、その期間中は雇用を維持すべきという考え方によるものです。
したがって、有期契約の試用期間中に能力不足などを理由に解雇された場合、無効となる可能性が高いため、諦めずに解雇理由を確認しておくようにしましょう。

Q4:弁護士への相談費用の目安

費用が心配で相談をためらう方は少なくありませんが、目安を知っておけば判断しやすくなります。
一般的な費用の目安は、次のとおりです。
  • 相談料:30分5,000円程度が相場。ただし労働問題に注力する事務所では、初回無料(60分無料など)としているところもあります
  • 交渉・内容証明郵便の作成:事案に応じた着手金が必要
  • 労働審判:20万円程度
  • 訴訟:30万円以上

まとまった費用をすぐに用意できない場合でも、分割払いが可能な事務所もあります。また、バックペイや解決金を獲得できれば、費用を差し引いても手元に残る金額が上回るケースもあります。

まずは初回無料相談を実施している事務所で、見通しと費用感を確認することがおすすめです。

 

まとめ

試用期間中であっても、会社が自由に解雇できるわけではありません。労働者は入社初日から法律に守られており、十分な指導もないまま能力不足を理由に解雇されたケースなどは、不当解雇と判断される可能性があります。

解雇を告げられたら、その場で退職届に署名せず、まずは解雇理由証明書を請求してください。手続きや請求できるお金にもルールがあり、離職理由は原則として会社都合となります。

一人で抱え込まず、総合労働相談コーナーや労働問題に強い弁護士へ早めに相談しましょう。試用期間で辞めた経歴も、伝え方次第で次の転職に活かせます。

株式会社ウェヌシス代表取締役 成田大輝様

株式会社ウェヌシス代表取締役
成田大輝

株式会社ウェヌシス代表取締役として、ひとり情シス・兼任情シスなど多忙な担当者の知識アップデートをサポートする研修事業を手掛ける。自身も2度の転職経験を持ち、その体験を活かして年間100本以上の転職・キャリア記事を執筆。実務体験に基づく教育と執筆活動で、IT分野の人材育成とキャリア形成を後押ししている。

保有資格

  • 情報技術能力検定試験 2級
  • MOS Excel 2016
  • ITパスポート試験
  • 基本情報技術者試験
  • 情報セキュリティマネジメント試験

参考サイト