
この記事でわかること
- 転職には賃金・休日・人間関係など6つのメリットがある一方、賃金が上がった人は40.5%にとどまる
- 賃金低下や退職金の目減り、評価のリセットなど、転職には見落としやすい6つのデメリットがある
- 賃金が増えた割合は20〜24歳で50.5%、55〜59歳で27.4%と、転職の損得は年代によって変わる
「転職のメリット・デメリット」を調べると、賃金が上がる、人間関係をリセットできる、退職金が目減りするといった項目が並びます。ただし、その一覧を最後まで読んでも、自分が転職すべきかどうかは決まりません。項目が自分に当てはまるかどうかは、年代や職種、転職の動き方によって変わるためです。
厚生労働省の調査によると、転職した人のうち、前職より賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%、変わらなかった人は28.4%でした。同じ「転職」という行動でも、結果は3つに分かれています。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6)
この記事では、転職で得られるものと失うものを6つずつ整理したうえで、厚生労働省の統計と20代・30代1,176人への独自調査をもとに、「自分の場合はどうなるか」を確かめる手順をまとめました。
- 1 | 転職の損得は「メリット・デメリット一覧」では決まらない
- 2 | 転職で得られる6つのメリットと、実際に得られた人の割合
- 3 | 転職で失うもの・背負うもの|6つのデメリット
- 4 | 【早見表】メリットとデメリットを同じ土俵に並べる
- 5 | 【お金編】転職で実際に増減するもの
- 6 | 「転職しない」という選択肢|社内異動・現職改善という代替案
- 7 | データで見る「満足した人」と「後悔した人」の差
- 8 | 【判断軸】転職したほうがいい人・しないほうがいい人
- 9 | 【年代別】メリット・デメリットの重みはどう変わるか
- 10 | 転職のメリット・デメリットに関するよくある質問
- 11 | まとめ|「得か損か」ではなく「何を優先するか」で決める
転職の損得は「メリット・デメリット一覧」では決まらない
転職のメリットとデメリットを一覧で比べても、自分が転職すべきかどうかの答えは出ません。同じ転職でも、結果は人によって異なるためです。
公的統計が示している実際の結果を確認したうえで、この記事が何をどの順序で扱うのかを整理します。
転職して賃金が上がった人は40.5%、下がった人は29.4%
厚生労働省の調査によると転職した人のうち、前職より賃金が増えたのは40.5%、減ったのは29.4%です。
増加の幅で見ると、1割以上増えた人が29.4%、1割以上減った人が21.7%です。増えた人の割合から減った人の割合を引くと11.1ポイントの差があり、2024年は増加が減少を上回っています。
ただし、この差は毎年同じではありません。同じ調査の推移を見ると、2019年から2021年にかけては減少した人の割合が増加した人を上回っていました。逆転したのは2022年で、2024年はその差がとくに開いた年にあたります。
転職市場の状況によって結果が動くため、この数字を「転職すれば賃金が上がる」と読み替えることはできません。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6・図5)
同じ「転職」でも20代と50代では結果が逆になる
20〜24歳は増加50.5%・減少16.8%ですが、55〜59歳は増加27.4%・減少36.6%と逆転します。
年齢階級別に見ると、賃金が増えた人と減った人の割合は次のように変わります。
年齢階級 | 賃金が増加 | 賃金が減少 | 増加-減少 |
|---|---|---|---|
20〜24歳 | 50.5% | 16.8% | +33.7ポイント |
30〜34歳 | 46.1% | 24.2% | +21.9ポイント |
45〜49歳 | 46.4% | 23.8% | +22.6ポイント |
50〜54歳 | 39.0% | 28.2% | +10.8ポイント |
55〜59歳 | 27.4% | 36.6% | −9.2ポイント |
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増加が減少を上回る状態は40代まで続きます。50代に入ると差が縮まり、55〜59歳で増減が逆転します。60〜64歳では47.3ポイントのマイナスです。
同じ「転職」という行動でも、年代によって結果の出方が反対になります。メリット・デメリットの一覧が自分に当てはまるかどうかは、この条件の違いを踏まえないと判断できません。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6)
この記事は一覧ではなく「自分の場合に置き換える手順」を扱う
この記事は、メリットとデメリットを並べたうえで、自分の条件に当てはめる手順まで扱います。
まず、転職で得られるもの6つと失うもの6つを、それぞれ実際に起きた割合とあわせて整理します。次に、その12項目を「あとで戻せるもの」と「戻せないもの」に分けて考えます。賃金や人間関係は転職を重ねれば変えられますが、退職金の計算に使う勤続年数や職歴は戻せません。
さらに、お金の増減の内訳、転職以外の選択肢、転職に満足した人と後悔した人の違いを確認し、自分の状況を確かめる7つの質問を用意しました。
転職をすすめることも、思いとどまらせることも目的にしていません。判断の材料をそろえたうえで、決めるのは読んだ方自身です。
転職で得られる6つのメリットと、実際に得られた人の割合
転職のメリットは、賃金・労働時間・人間関係・スキル・評価・働き方の6つに整理できます。ただし、どれも転職すれば自動的に手に入るものではありません。
賃金が実際に上がった人は40.5%です。6つのメリットを、関連するデータや、実現しやすい条件とあわせて整理します。
メリット1:賃金が上がる(実際に上がった人は40.5%)
転職で前職より賃金が増えた人は40.5%で、全体の4割にとどまります。
29.4%は減少し、28.4%は変わっていません。賃金アップは転職でもっとも多く挙げられるメリットですが、全員が得られるわけではない点に注意が必要です。
一方で、どういう転職かによって割合は変わります。就業形態別に見ると、次のとおりです。
転職の種類 | 賃金が増加 | 賃金が減少 | 増加-減少 |
|---|---|---|---|
全体 | 40.5% | 29.4% | +11.1ポイント |
一般労働者から一般労働者へ | 41.6% | 28.5% | +13.1ポイント |
うち雇用期間の定めがない者どうし | 42.0% | 25.7% | +16.3ポイント |
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雇用期間の定めがない一般労働者どうしの移動、つまり正社員から正社員への転職では、増加が減少を16.3ポイント上回ります。全体の11.1ポイントより差が開いており、雇用形態を落とさない転職のほうが賃金は上がりやすい傾向が読み取れます。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6・表7)
なお、転職サービスを使って転職した30代700人への調査では、賃金が上がった人は63.9%でした。
厚生労働省の40.5%と開きがあるのは、母集団が違うためです。厚生労働省の数字は自営業からの転職を除くすべての転職入職者を対象としており、自社調査は転職サービスを利用した人に限られます。
※ 参考元:UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査
賃金を上げることを主な目的にしている場合は、転職で年収を上げる具体的な方法もあわせて確認してください。
メリット2:労働時間・休日が改善する
転職先を選ぶとき「労働時間・休日の改善」をもっとも重視した30代は26.0%でした。
年収アップの31.6%に次いで多く、4人に1人が労働条件の改善を第一に置いています。
※ 参考元:UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査 」
辞める理由としても同じ傾向が出ています。転職した人が前職を辞めた理由を見ると、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%で、個人的な理由のなかでもっとも多くなっています。
男性は8.6%です。前年と比べると、女性は1.7ポイント上昇しました。
労働時間と休日は、6つのメリットのなかでは事前に確認しやすい項目です。所定労働時間、年間休日数、平均残業時間、有給取得率は求人票や会社の採用ページに記載されていることが多く、面接でも確認できます。
ただし、記載されている数値と実態が異なる場合もあるため、配属予定の部署の実績を個別に聞いておくと差が縮まります。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表5)
メリット3:人間関係をリセットできる
前職を辞めた理由に「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた人は、男性9.0%、女性11.7%です。
女性では個人的な理由のなかで2番目に多く、男性でも上位に入ります。人間関係は本人の努力だけでは変えにくく、転職はその関係を一度断ち切れる手段になります。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要 」
ただし、次の職場の人間関係を選ぶことはできません。上司や同僚は入社してから決まるため、転職すれば人間関係が改善するとは言い切れない点には注意が必要です。
面接で会える人は限られており、配属先の全員と話せるわけでもありません。
もし合わないのが特定の上司や部署に限られているなら、会社そのものを変えなくても解決する可能性があります。人間関係がきついと感じる場合、まずは上司や人事に相談して異動できないか確認してみると良いでしょう。
メリット4:新しいスキル・経験が得られる
転職先を選ぶとき「スキルアップ」をもっとも重視した30代は21.6%でした。
年収アップ31.6%、労働時間・休日の改善26.0%に次ぐ順位で、5人に1人が仕事の中身を理由に転職先を決めています。
※ 参考元:UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査 」
同じ会社に長くいると、担当する業務の範囲は固定されやすくなります。部署の役割や人員配置で決まるため、本人が希望しても変わらないことがあります。転職では環境が変わるため、新しいスキル・経験を得られる点がメリットです。
ただし、得られるスキルは配属先と担当業務によって決まります。求人票の職種名だけでは、実際に何を任されるかまでは分かりません。
入社後に担当する範囲、使うツールや技術、教育体制の有無を面接で確認しておくと、入社後のミスマッチが減ります。
また、経験のない分野へ移る場合は、これまでの実績が評価に反映されにくくなります。賃金が減った人が29.4%いることを踏まえると、スキルの獲得と年収の維持は同時に成立しない場合がある点は見込んでおく必要があります。
メリット5:評価がリセットされ、やり直せる
転職すると、今の会社での評価はいったんゼロに戻り、新しい会社で一から見てもらえます。
会社での評価は、直近の成果だけで決まるわけではありません。過去の失敗や上司との相性、異動の経緯といったものが積み重なっていて、本人ががんばるだけでは変わりにくい面があります。
一度評価が下がると任される仕事も軽くなり、そこからさらに上げにくくなることもあります。
転職すれば、そうした経緯を知らない人たちのなかで働くことになります。見られるのは職務経歴と、面接で伝えた内容です。今の会社で行き詰まっていると感じている場合、転職はその状態から抜け出す手段になります。
ただし、なくなるのは悪い評価だけではありません。これまで積み上げてきた信頼や、社内で話を通しやすかった関係も一緒になくなります。失う側については、デメリット4で扱います。
社外での評価のされ方は、社内とは違います。自分の経験が他社でどう見られるのかを先に確かめておくと、応募先を選ぶときにも条件を交渉するときにも判断しやすくなります。確かめ方は自分の市場価値を把握する方法で解説しています。
メリット6:働く場所と裁量を選び直せる
働く場所や出社の頻度、仕事の任され方は、転職のタイミングでまとめて見直せます。
これらは会社の制度として決まっているため、今の会社にいたまま自分の希望で変えるのは難しい部分です。転職なら、制度そのものが違う会社を選べます。
条件 | 今の会社で変えられるか | 転職時に選べるか |
|---|---|---|
勤務地・転勤の有無 | 地域限定の制度がなければ難しい | 選べる |
出社の頻度・リモートの可否 | 会社の方針しだい | 選べる |
労働時間の制度(フレックス・裁量労働など) | 職種が変わらないと難しい | 選べる |
任される仕事の範囲 | 異動や社内公募で変わることがある | 選べる |
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リモートワークを条件にしたい場合は、出社の頻度や対象になる職種が会社ごとに大きく違います。フルリモートに転職するメリットとデメリットもあわせて確認してください。
なお、募集のときの条件がずっと続くとは限りません。出社の頻度は、会社の方針が変われば見直されることがあります。求人票に書かれていることだけでなく、最近制度が変わっていないかを聞いておくと判断材料になります。
転職で失うもの・背負うもの|6つのデメリット
転職のデメリットは、年収・退職金・信用・人間関係・賞与・再転職コストの6つに整理できます。気持ちの問題として語られがちですが、実際には金額と期間で見積もれるものが多く、事前に計算しておけば判断材料になります。
6つのデメリットを、何がどれくらい起きるのかとあわせて整理します。
デメリット1:賃金が下がることがある(29.4%)
転職して前職より賃金が減った人は29.4%で、およそ3人に1人にあたります。
このうち、1割以上減った人が21.7%です。減り方が小さい人ばかりではありません。
下がりやすいかどうかは、年齢と転職の中身で変わります。55〜59歳では減った人が36.6%と、増えた人の27.4%を上回ります。
一方、雇用期間の定めがない一般労働者どうしの転職では、減った人は25.7%にとどまります。正社員から正社員へ移る場合と、雇用形態が変わる場合とでは、結果がかなり違います。
なお、賃金が下がっても残業が減っていれば、時間あたりの収入では改善していることもあります。金額だけで比べると判断を誤ることがあるため、労働時間とセットで見ておくと実態に近づきます。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6・表7)
デメリット2:退職金・企業年金が目減りする
退職金は勤続年数をもとに計算されるため、勤続を途中で区切ると総額が下がりやすくなります。
厚生労働省の調査では、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者が受け取った退職給付額の平均は、勤続20〜24年で1,021万円、勤続35年以上で2,037万円でした。
勤続年数が長くなるほど1年あたりの増え方が大きくなる仕組みになっているため、同じ年数働いても会社を分けると総額は伸びにくくなります。
また、退職金の制度そのものがない会社もあります。退職給付制度がある企業は74.9%で、4社に1社にはありません。転職先に制度があるかどうかは、求人票や労働条件通知書で確認できます。
いつ辞めると金額がどう変わるかは、退職金とボーナスで損をしない辞めどきで具体的に計算しています。
※ 参考元:厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査 結果の概況」4 退職給付(一時金・年金)の支給実態(第21表・第23表)
デメリット3:ローンやクレジットの審査が通りにくい時期ができる
勤続年数を審査項目にしている金融機関は93.2%で、転職直後は不利になる場合があります。
国土交通省が住宅ローンを扱う金融機関1,000社近くに聞いた調査では、融資の審査で「勤続年数」を考慮する機関が93.2%ありました。賃金の93.4%、完済時年齢の98.4%と並ぶ主要な項目です。
求める勤続年数は機関によって違います。回答した機関のうち、「1年以上」が612機関、「その他」が168機関、「3年以上」が128機関、「2年以上」が53機関という内訳でした。1年を目安にしている機関が多いものの、3年を求める機関も一定数あります。
審査の基準は金融機関ごとに異なり、勤続年数が短いと必ず落ちるわけではありません。賃金や返済負担率など他の項目も見られるため、転職で賃金が上がった場合は有利に働くこともあります。
ただし、住宅ローンや自動車ローンを近いうちに組む予定があるなら、転職の時期をずらすという判断もありえます。
※ 参考元:国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」融資を行う際に考慮する項目
デメリット4:人間関係と評価をゼロから積み直す
転職先では、仕事の進め方も人の関係も一から覚え直すことになります。
誰に聞けば話が早いか、どこまで自分の判断で進めてよいか、どの資料がどこにあるか。こうした情報はマニュアルには書かれていません。
働きながら少しずつ覚えていくしかないため、同じ職種に移ったとしても、しばらくは今までより時間がかかります。
評価についても同じです。転職先では実績がない状態から始まるため、任される仕事は小さめのものが多くなります。まとまった成果を出すまでに時間がかかるのが一般的です。
前の会社で管理職だった人が、次の会社では同じ範囲を任されないこともあります。
評価がリセットされることは、やり直せるという意味ではメリットです。一方で、積み上げてきたものを手放すという意味ではデメリットになります。どちらに働くかは、今の会社で自分がどういう立場にいるかによって変わります。
デメリット5:ボーナス・有給に空白が生まれる
有給休暇は入社から6か月たたないと付与されないため、転職直後は休みが取りにくくなります。
労働基準法では、雇い入れの日から6か月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日の有給休暇を与えることになっています。前の会社で残っていた有給休暇を持ち越すことはできません。
※ 参考元:厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇(労働基準法第39条)
賞与については、支給日に在籍していることを条件にしている会社では、支給日より前に退職すると受け取れません。転職先でも、入社してすぐの査定期間は在籍期間が短いぶん減額されることがあります。
条件は就業規則に書かれているため、転職前によく確認しましょう。
いつ辞めれば賞与と退職金の損が小さいかは、月ごとの辞めどきの比較で整理しています。
デメリット6:合わなかったときの再転職コストが上乗せされる
転職先が合わなかった場合、もう一度同じ手間と時間をかけることになります。
応募書類の作成、求人の比較、面接の日程調整、引き継ぎ、入社の手続きといった負担が、そのままもう一度かかります。在職中に進める場合は、今の仕事と並行させなければなりません。
加えて、短い期間で辞めた経歴は職務経歴書に残ります。次の選考で理由を聞かれることが増え、説明の準備が必要です。何年で辞めると不利になるのかは業界や職種によって違うため、短期離職が選考でどう見られるかを確認しておくと見積もりやすくなります。
入社してから合わないと気づいた場合の立て直し方は、転職に失敗したと感じたときの対処法で解説しました。
このコストは、転職を決める前にどこまで調べたかで発生する確率が変わります。何を調べれば差がつくのかは、満足した人と後悔した人のデータから確認できます。
【早見表】メリットとデメリットを同じ土俵に並べる
メリットとデメリットは、数を数えて多いほうを選ぶものではありません。6つずつあっても、ひとつひとつの重さは人によって違うからです。
同じ項目について得られる側と失う側を並べ、そのうえで「あとで戻せるもの」と「戻せないもの」に分けていきます。
6つのメリットと6つのデメリットの対応表
同じ項目を横に並べると、どちらに転ぶ可能性もあることが見えてきます。
項目 | 転職で得られる可能性 | 転職で失う可能性 | 実際に起きた割合 | あとで戻せるか |
|---|---|---|---|---|
賃金 | 前職より上がる | 前職より下がる | 増加40.5%/減少29.4% | 戻せる |
労働時間・休日 | 残業が減り、休日が増える | 今より忙しくなる | — | 戻せる |
人間関係 | 合わない相手から離れられる | 一から築き直すことになる | — | 戻せない |
スキル・経験 | 新しい仕事を経験できる | 今の専門性が使われなくなる | — | 戻せる |
評価 | ゼロから見てもらえる | 積み上げた信頼がなくなる | — | 戻せない |
働く場所・裁量 | 勤務地や出社頻度を選び直せる | 入社後に制度が変わることがある | — | 戻せる |
退職金 | 転職先に制度があれば積み直せる | 勤続が分かれて総額が下がる | 制度がある企業は74.9% | 戻せない |
信用(ローン審査) | 賃金が上がれば有利に働く | 勤続年数が短い時期ができる | 勤続年数を見る金融機関は93.2% | 戻せる |
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割合の欄が「—」になっている項目は、何割の人にそれが起きたかを示す統計が見つかりませんでした。労働時間や人間関係は転職後にどう変わったかを集計した公的データがないため、数字ではなく可能性として書いています。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6)/厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査 結果の概況」4 退職給付(一時金・年金)の支給実態(第21表)/国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」融資を行う際に考慮する項目
「あとで戻せるもの」と「戻せないもの」で分ける
判断のときに重く見たいのは、あとから戻せない退職金・評価・人間関係の3つです。
賃金が下がっても、次の転職や昇給で戻せる余地はあります。労働時間やスキル、働く場所も同じで、合わなければまた変えられます。ローン審査に影響する勤続年数も、その会社で働き続ければ増えていきます。これらは一度悪くなっても、時間をかければ取り返せる項目です。
一方、退職金の勤続年数は分かれた時点で確定します。前の会社で積み上げた評価や人間関係も、辞めたあとに戻すことはできません。この3つは、転職を決めた瞬間に手放すものだと考えておく必要があります。
つまり、判断の材料は「メリットが6個でデメリットが6個」という数ではありません。戻せない3つを手放してでも、得たいものがあるかどうかが決め手になります。
なお、年代によって「戻せる」の重さは変わります。20代であれば賃金が一度下がっても取り返す機会は何度もありますが、50代後半では賃金が減った人のほうが多くなるため、戻せる項目も戻しにくくなります。
【お金編】転職で実際に増減するもの
転職で動くお金は賃金だけではありません。退職金、賞与、社会保険、ローンの審査が同時に影響を受けます。しかも、それぞれ確認できるタイミングが違うため、気づいたときには手遅れというものも混ざっています。
5つの項目について、何が起きるのかと、いつ確認すればいいのかを順に見ていきます。
賃金:上がる人と下がる人の分かれ目
賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%。分かれ目のひとつは、雇用形態を落とさずに移れるかどうかです。
雇用期間の定めがない一般労働者どうしの転職では、増えた人が42.0%、減った人が25.7%となり、その差は16.3ポイントあります。全体の11.1ポイントより広い差です。正社員から正社員へ移るかぎり、増える側に寄りやすいと言えます。
確認するタイミングは、内定が出てから入社を決めるまでの間です。提示された金額が、基本給なのか、固定残業代を含んだ額なのか、賞与の見込みを足した額なのかで、実際の手取りは変わります。
オファー面談の場で、月給の内訳と賞与の支給実績を聞いておくと、入社後のずれを防げます。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6・表7)
提示額を上げる交渉の進め方は、年収アップにつながる転職の進め方でまとめています。
退職金:勤続年数で計算されるため、分割すると総額が下がりやすい
大学・大学院卒の定年退職者が受け取った金額の平均は、勤続20〜24年で1,021万円、35年以上で2,037万円でした。
勤続年数ごとの平均額は次のとおりです。
勤続年数 | 大学・大学院卒 | 高校卒 | 高校卒 |
|---|---|---|---|
20〜24年 | 1,021万円 | 557万円 | 406万円 |
25〜29年 | 1,559万円 | 618万円 | 555万円 |
30〜34年 | 1,891万円 | 1,094万円 | 800万円 |
35年以上 | 2,037万円 | 1,909万円 | 1,471万円 |
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勤続年数が20〜24年と35年以上では、大学・大学院卒で約2倍の開きがあります。後半になるほど1年あたりの増え方が大きくなる設計になっているため、20年ずつ2社で働いた場合と、40年を1社で勤め上げた場合とでは、受け取る合計額が変わってきます。
辞め方によっても差が出ます。大学・大学院卒の場合、定年退職では1,896万円、自己都合の退職では1,441万円でした。
確認するタイミングは、退職を申し出る前です。退職金の計算方法は就業規則か退職金規程に書かれています。何年勤めれば支給対象になるのか、自己都合だと何割になるのかは、この2つを見れば分かります。
※ 参考元:厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査 結果の概況」4 退職給付(一時金・年金)の支給実態(第22表・第23表)
ボーナス:支給日と退職日の関係
支給日に在籍していることを条件にしている会社では、その前に辞めると受け取れません。
賞与には、査定の対象になる期間と、実際に支払われる日があります。この2つは数か月ずれていることが多く、査定期間をまるまる働いていても、支給日の前に退職すると支払われない場合があります。
転職先での初回の賞与も、満額にならないことが多いです。在籍期間が短い分だけ按分されるか、そもそも支給対象外という会社もあります。
確認するタイミングは2回あります。退職日を決める前に今の会社の賞与規程を、内定が出たときに転職先の初回賞与の扱いを確認してください。この2つを押さえておけば、賞与が1回分丸ごと消えるという事態は避けられます。
月別にどう損得が変わるかは、賞与と退職金から見た退職時期の選び方で比較しています。
社会保険・年金:空白期間が1日でもあると手続きが必要
退職日の翌日に入社しない場合、あいた日数のぶんだけ自分で国民年金と健康保険の手続きをすることになります。
日本年金機構は、3月末で退職して4月16日に入社した場合の例を示しています。このケースでは、4月1日から4月15日までが国民年金第1号被保険者の期間にあたり、その資格取得の手続きが必要です。
会社が代わりにやってくれるわけではないので、自分で市区町村の窓口へ行く必要があります。
※ 参考元:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
健康保険も同じように切り替えが要ります。国民健康保険に入るか、今の健康保険を任意継続するかを選ぶことになりますが、どちらにも申請の期限があります。
確認するタイミングは、退職日と入社日を決める段階です。退職日の翌日を入社日にできれば、この手続きは発生しません。数日ずらすだけで手間と保険料が変わるので、両社との日程調整のときに意識しておくと楽になります。
ローン・クレジット:勤続年数が審査項目に入る
住宅ローンの審査で勤続年数を見ている金融機関は93.2%あります。
求める年数は機関によって違い、1年以上とする機関が612、3年以上とする機関が128という内訳でした。転職直後は、選べる金融機関や商品が少なくなる時期だと考えておくとよいでしょう。
※ 参考元:国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」融資を行う際に考慮する項目
確認するタイミングは、転職を決める前です。2年以内に住宅を買う予定があるなら、転職と住宅ローンの申し込みのどちらを先にするかを決めておく必要があります。先に事前審査だけ通しておくという進め方もあります。
「転職しない」という選択肢|社内異動・現職改善という代替案
不満の原因が上司や部署にある場合は、異動で解決できることがあります。会社の仕組みそのものに原因がある場合は、解決は困難です。
転職するかどうかを決める前に、今の会社のなかで変えられる余地があるかを一度確かめておくと、判断の精度が上がります。
不満の原因が「上司や部署」なら、異動で解決する可能性がある
合わないのが特定の上司やチームであれば、部署が変わるだけで解消することがあります。
転職した人が前職を辞めた理由を見ると、「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた人は男性9.0%、女性11.7%でした。人間関係は部署という単位のなかで成り立っているため、相手が変われば状況も変わります。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表5)
担当している仕事の内容が合わない場合も同じです。社内公募の制度がある会社なら、募集が出ているポジションに応募できます。制度がなくても、上司との面談や人事への相談で希望を伝える方法はあります。
そもそも自分にどんな仕事が向いているのかがはっきりしないなら、自分に合う仕事の見つけ方を先に読んでおくと、異動の希望も出しやすくなります。
不満の原因が「会社の構造」なら、異動では解決しない
給与の水準や評価の仕組み、事業の将来性への不安は、部署を変えても変わりません。
30代が転職先を選ぶときもっとも重視した項目は、年収アップが31.6%で最多でした。給与テーブルは会社ごとに決まっているため、社内で異動しても上限は変わりません。同じ会社で年収を大きく伸ばすには、昇進か昇格を待つことになります。
労働時間・休日の改善を挙げた人も26.0%いました。こちらは部署によって差が出る部分もありますが、年間休日数や残業に対する考え方は会社の方針で決まっている面が大きく、異動だけでは変わりにくい項目です。
※ 参考元:UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査」
評価制度や退職金の仕組みも会社単位で決まっています。ここに不満があるなら、異動では届きません。今が辞めどきかどうかの見極め方は、仕事の辞めどきに表れるサインで整理しています。
社内異動と転職を比べる4つの観点
どちらを先に検討するかは、次の4つを見比べると決めやすくなります。
観点 | 社内異動 | 転職 |
|---|---|---|
解決できる不満 | 上司・同僚・担当業務 | 左記に加えて、給与水準・制度・事業内容 |
かかる時間 | 希望を出してから次の人事異動のタイミングまで | 求人探しから入社まで数か月 |
賃金への影響 | 社内の給与テーブルの範囲内で動く | 増えた人40.5%/減った人29.4% |
合わなかったときの戻りやすさ | もう一度異動を希望できる | 再び転職活動をすることになる |
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異動の強みは、合わなかったときのやり直しがきくところです。一方で、希望が通るかどうかは会社の都合に左右されます。転職は自分で決められる範囲が広いかわりに、戻すためのコストが大きくなります。
転職しないことにもデメリットはある
今の会社に残るという判断にも、失うものがあります。
異動の希望は必ず通るわけではありません。ポジションに空きがなければ見送りになりますし、次の人事異動まで数か月から1年待つこともあります。
もうひとつは、自分の条件が外からどう見えるかを知る機会がなくなる点です。転職活動をすると、自分の経験にどれくらいの提示額がつくのかが分かります。転職活動をしなければ、その情報を手に入れることは難しいでしょう。
年齢による違いもあります。賃金が増えた人の割合は20〜24歳で50.5%ともっとも高く、50代に入ると下がっていきます。判断を先送りにすると、動くときの条件が変わっている可能性があります。
転職しないことは、何もしないことではなく、ひとつの選択です。動くのが面倒で先延ばしにしているだけなら、転職活動が面倒に感じるときの進め方を見てから決めても遅くありません。
データで見る「満足した人」と「後悔した人」の差
転職前に情報収集をした30代の満足度は63.2%、しなかった人は22.7%でした。その差はおよそ3倍です。決める前に情報収集した人と、しなかった人では満足度に差が見られました。
20代476人と30代700人に聞いた調査から、何が差になったのかを見ていきます。
20代の約75%、30代の58%が転職に満足している
転職を経験した20代の約75%、30代の58%が、自分の転職活動に満足したと答えています。
この数字は、転職サービスを使って転職した人への調査によるものです。20代は476人を対象に2025年11月中旬、30代は700人(男性350人・女性350人)を対象に2026年1月下旬に実施しました。
全転職者を代表する数値ではない点は、読むときに踏まえておいてください。
項目 | 20代(476人) | 30代(700人) |
|---|---|---|
転職活動に満足している | 約75% | 58% |
年収が上がった | 69% | 63.9% |
年収は変わらなかった | 18% | 20.0% |
年収が下がった | 13% | 16.1% |
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賃金が上がった人の割合は、厚生労働省の統計で40.5%、この調査では60%台です。数字が開いているのは対象者が違うためで、厚生労働省は転職した人全体を、この調査は転職サービスの利用者だけを集計しています。
※ 参考元:UPPGO株式会社「20代476人に聞いた転職の実態調査」/UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査」
事前の情報収集の有無で満足度に差が見られた
満足した人と後悔した人を分けていたのは、転職先の当たり外れではなく、決める前に調べたかどうかでした。
30代700人のうち、転職前に情報収集をしたと答えたのは612人です。しなかったと答えた88人と満足度を比べると、はっきりした差が出ました。20代でも同じ傾向で、情報収集をした432人と、しなかった44人で結果が分かれています。
年収、勤務地、仕事内容といった条件は人によってばらばらです。それでも満足度に共通して効いていたのは、調べたかどうかという行動のほうでした。
情報収集した人としなかった人で満足度は3倍近く違う
30代では63.2%と22.7%、20代では78.2%と40.9%という差がつきました。
年代 | 情報収集をした人 | しなかった人 | 差 |
|---|---|---|---|
20代 | 78.2%(432人) | 40.9%(44人) | 約1.9倍 |
30代 | 63.2%(612人) | 22.7%(88人) | 約2.8倍 |
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30代のほうが差は大きく、3倍近くまで開いています。年齢が上がるほど、勤続年数や家庭の事情が絡んで判断の条件が増えるため、調べずに動いたときの影響も出やすいと考えられます。
ただし、調べれば必ず満足できるという関係ではありません。もともと慎重な人ほど情報収集もしているという可能性はあります。それでも、しなかった人の満足度が20代で4割、30代で2割台という結果は、調べないまま決めることのリスクを示しています。
※ 参考元:UPPGO株式会社「20代476人調査」Q9/UPPGO株式会社「30代700人調査」Q9
何を、どこまで調べればよいのか
調べる対象は、求人票に書かれていない条件と、入社後に変えられない条件の2つです。
求人票で分かるのは、給与の幅、勤務地、職種名くらいです。実際に差が出るのは、そこに書かれていない部分にあります。
- 提示された月給に、固定残業代がいくら含まれているか
- 賞与は何か月分が実際に支払われているか
- 配属予定の部署の残業時間と有給取得率
- 入社後に担当する業務の範囲
- 評価がどう決まり、いつ昇給の機会があるか
- 退職金の制度があるかどうか
これらは面接やオファー面談で聞けます。聞きにくいと感じる項目は、転職エージェントを通して確認する方法もあります。
どこまで調べるかの区切りは、内定を承諾する前です。労働条件通知書を受け取ったら、提示されている内容と、面接で聞いた話が一致しているかを突き合わせてください。
ここまで済ませておけば、入社後に「話が違う」とミスマッチになる可能性はかなり減らせます。
【判断軸】転職したほうがいい人・しないほうがいい人
転職を検討したほうがいいのは、不満の原因が会社の仕組みにあり、社内では解決できない場合です。
反対に、原因がはっきりしないまま動くと、次の職場でも同じことが起きます。判断の材料として、検討したほうがいいサインと、急がないほうがいいケース、そして自分に当てはめる7つの質問を用意しました。
転職を検討したほうがいい5つのサイン
次の5つに当てはまる場合、社内で解決できる余地は小さくなっています。
- 不満の原因が、給与テーブルや評価制度など会社の仕組みにある
- 異動や社内公募を申し出たが、状況が変わらなかった
- やりたい仕事が、今の会社の事業のなかに存在しない
- 数年後の自分が今の上司や先輩と重なり、そうなりたいと思えない
- 睡眠や食事に影響が出ている
上の4つは、いずれも「自分が努力すれば変わる」範囲を超えています。制度や事業の中身は個人では動かせないため、環境そのものを変えるほうが早い場面です。
ほかにも辞めどきを示すサインはあるので、仕事を辞めるタイミングの見極め方もあわせて確認してみてください。
5つ目については、転職の判断より先に対処が必要です。眠れない日が続いている、食事がとれない、休日も気持ちが休まらないといった状態であれば、産業医や医療機関に相談してみてください。
転職活動には体力がいります。判断を急ぐより、まず回復を優先したほうが結果的に選べる選択肢は増えます。
転職を急がないほうがいい4つのケース
次の4つに当てはまる場合は、動く前に整理しておいたほうが失敗しにくくなります。
- 合わないのが特定の上司や同僚で、異動すれば離れられる
- 何が不満なのか、自分でも言葉にできていない
- 始めたばかりの仕事があり、まだ成果が形になっていない
- 次の仕事を決めないまま辞めようとしている
2つ目が一番多いパターンです。不満の中身がはっきりしないまま求人を見ると、条件の良さそうな会社に目移りして、結局は同じ理由で辞めることになります。何の仕事がしたいか分からないときの考え方から先に手をつけると、遠回りに見えて早く進みます。
4つ目は、状況によって判断が分かれます。心身の状態や貯蓄、家族の事情で答えが変わるため、次が決まっていない状態で辞めてよいかの見極め方で条件を確認してから決めてください。
迷ったときに順番に確認する7つの質問
上から順に答えていくと、自分がどこで止まっているかが分かります。
質問 | YESの場合 | NOの場合 |
|---|---|---|
1. 不満の原因を1つに絞れますか | 次の質問へ | 思いつくものを書き出し、一番大きいものを選ぶ |
2. その原因は、上司や部署が変われば解消しますか | 異動を先に検討する | 次の質問へ |
3. 異動や社内公募を申し出たことがありますか | 次の質問へ | 申し出てからでも遅くない |
4. 転職先に求める条件を、優先順に3つ挙げられますか | 次の質問へ | 条件を決めてから求人を見る |
5. その3つのうち、絶対に譲れないものを1つ選べますか | 次の質問へ | すべては満たせない前提で順位をつける |
6. 賃金が一時的に下がっても受け入れられますか | 選べる求人の幅が広がる | 賃金を最優先の条件に据える |
7. 退職金・賞与・勤続年数で失う金額を計算しましたか | 判断の材料はそろっている | 計算してから決める |
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質問4と5でつまずく人は多いはずです。30代が転職先を選ぶときにもっとも重視した項目は、年収アップが31.6%、労働時間・休日の改善が26.0%、仕事のやりがいが21.7%、スキルアップが21.6%と分かれていました。
何を優先するかは人によって違い、正解はありません。
※ 参考元:UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査」Q2
この7つに答えても、転職すべきかどうかの結論は出ません。出てくるのは、自分が何を優先したいのか、どの情報がまだ足りていないのかという2つです。決めるのはそのあとになります。
それでも決められないときの進め方
決められない理由の多くは、迷いではなく情報不足です。
転職前に情報収集をした30代の満足度は63.2%、しなかった人は22.7%でした。この差は、決める前に動いた人とそうでない人の差でもあります。
求人を見ることと、応募することと、内定を承諾することは別の行動です。求人を10件見ても、何も決まりません。
※ 参考元:UPPGO株式会社「30代700人に聞いた転職の実態調査」
そのうえで、期限を決めておくことをおすすめします。「3か月以内に情報を集めて、そこで一度結論を出す」と区切っておけば、迷ったまま1年が過ぎることはなくなります。
やりたいことが見つからないまま迷っている場合は、やりたいことがない人の転職の進め方が参考になります。
実際に転職したあとで合わないと感じたときの立て直し方は、転職に失敗したと感じたときにやることでまとめました。先に読んでおくと、失敗したときの戻し方まで含めて判断できます。
【年代別】メリット・デメリットの重みはどう変わるか
転職で賃金が増えた人の割合は、20〜24歳で50.5%、45〜49歳でも46.4%ありますが、55〜59歳では27.4%まで下がります。40代までは大きく変わらず、50代半ばで反転する形です。年齢階級ごとの数値は次のとおりです。
年齢階級 | 増加 | 変わらない | 減少 | 増加-減少 |
|---|---|---|---|---|
計 | 40.5% | 28.4% | 29.4% | +11.1ポイント |
19歳以下 | 48.8% | 34.9% | 11.9% | +36.9ポイント |
20〜24歳 | 50.5% | 31.5% | 16.8% | +33.7ポイント |
25〜29歳 | 46.3% | 23.1% | 29.2% | +17.1ポイント |
30〜34歳 | 46.1% | 29.1% | 24.2% | +21.9ポイント |
35〜39歳 | 45.5% | 28.0% | 24.3% | +21.2ポイント |
40〜44歳 | 45.9% | 23.7% | 29.0% | +16.9ポイント |
45〜49歳 | 46.4% | 26.9% | 23.8% | +22.6ポイント |
50〜54歳 | 39.0% | 31.7% | 28.2% | +10.8ポイント |
55〜59歳 | 27.4% | 33.6% | 36.6% | −9.2ポイント |
60〜64歳 | 13.6% | 24.2% | 60.9% | −47.3ポイント |
65歳以上 | 23.7% | 33.7% | 40.5% | −16.8ポイント |
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※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6)
20代:賃金が上がる人が最も多い(20〜24歳で50.5%)
20〜24歳は増えた人が50.5%、減った人が16.8%で、その差は33.7ポイントあります。全年齢のなかでもっとも上振れしやすい層です。
25〜29歳になると減った人が29.2%まで増え、差は17.1ポイントに縮まります。同じ20代でも、前半と後半では結果の出方が異なります。
20代で転職がうまくいかなかった場合の立て直し方は、20代で転職に失敗したときの考え方でまとめています。
30代:上がる人46%・下がる人24%
30〜34歳は増えた人が46.1%、減った人が24.2%。35〜39歳もほぼ同じで、45.5%と24.3%です。20代前半ほどの上振れはないものの、増えた人が減った人を20ポイント以上上回っています。
一方で、この年代から判断材料が増えます。住宅の購入や子どもの学費といった支出が増える人も多く、賃金が一時的に下がることを受け入れにくくなります。
40代:45〜49歳までは上振れが続く
40〜44歳は増えた人が45.9%、45〜49歳は46.4%。30代とほとんど変わりません。
年齢が上がると賃金が下がると思われがちですが、40代までは数字の上で当てはまりません。ただし減った人の割合は40〜44歳で29.0%と、30代より高くなっています。上がる人も下がる人も多く、結果のばらつきが大きい年代です。
50代以降:55〜59歳で「増加-減少」がマイナスに転じる
50〜54歳は増えた人が39.0%で、差はまだプラスの10.8ポイントです。55〜59歳になると増えた人27.4%に対して減った人が36.6%となり、マイナス9.2ポイントに転じます。
60〜64歳では減った人が60.9%を占め、差はマイナス47.3ポイントまで開きます。定年前後の再雇用や役職定年が影響していると考えられます。
この年代で転職を考える場合、賃金が下がる前提で条件を組み立てるほうが現実的です。動く時期をいつにするかについては、転職活動を始めるタイミングの決め方を参考にしてみてください。
転職のメリット・デメリットに関するよくある質問
転職して後悔する人は何割くらいですか?
転職サービスを使って転職した人への調査では、20代の約75%、30代の58%が転職活動に満足しています。後悔する人の割合についてはデータがありません。
この数字は転職サービスの利用者に限った集計で、転職した人全体を表すものではありません。厚生労働省の統計では、転職して賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%となっています。
※ 参考元:UPPGO株式会社「20代476人調査」/UPPGO株式会社「30代700人調査」/厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6)
転職しない方がいい人の特徴は?
不満の原因が上司や部署にあり、異動で解決できる場合は転職を急ぐ必要はありません。
次の4つに当てはまる場合は、動く前に整理しておくと失敗しにくくなります。
- 合わないのが特定の上司や同僚で、異動すれば離れられる
- 何が不満なのか、自分でも言葉にできていない
- 始めたばかりの仕事があり、まだ成果が形になっていない
- 次の仕事を決めないまま辞めようとしている
転職すると退職金は少なくなりますか?
退職金は勤続年数をもとに計算されるため、勤続を分割すると総額が下がりやすくなります。
ただし、計算方法は会社の制度によって違います。そもそも退職金の制度がない会社もあります。実際にいくら変わるのかは、退職金と賞与から見た辞めどきで確認してみてください。
転職するとローンの審査は通りにくくなりますか?
勤続年数が審査項目に含まれるため、転職直後は一時的に不利になる場合があります。
住宅ローンを扱う金融機関のうち、勤続年数を考慮すると答えたのは93.2%でした。ただし求める年数は機関ごとに違い、短いからといって必ず審査に通らないわけではありません。賃金など他の項目もあわせて見られます。
※ 参考元:国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」融資を行う際に考慮する項目
転職で賃金が上がる人はどれくらいいますか?
厚生労働省の令和6年の調査では、転職した人の40.5%が前職より賃金が増加しています。
減った人は29.4%、変わらない人は28.4%でした。年代による差も大きく、20〜24歳では増えた人が50.5%を占める一方、55〜59歳では27.4%まで下がります。
※ 参考元:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(表6)
転職と社内異動、どちらを先に検討すべきですか?
不満の原因が部署のなかで完結するなら、異動を先に検討する価値があります。
上司や同僚との相性は、部署が変われば解消することがあります。一方、給与テーブルや評価制度への不満は会社全体で決まっているため、異動しても変わらないケースが多いです。
原因がどちらにあるかで、対処方法が異なります。
転職で一番しんどい時期はいつですか?
在職中は選考と業務が重なる時期、入社後は最初の3か月が負荷の高い時期だと言われます。
感じ方には個人差があるため、誰にとっても同じとは限りません。眠れない、食事がとれないといった状態が続いている場合は、転職の判断より先に産業医や医療機関へ相談してみてください。
転職にメリットがないと感じるのはどんなときですか?
不満の解消だけを目的にして、次の職場で何を得るかを決めずに動いたときです。
「今の会社を離れたい」という理由だけで転職すると、条件の良さそうな会社に目移りして、同じ不満を繰り返すことになりがちです。何を優先するかを先に決めておくと、判断の基準ができます。
転職エージェントを使うかどうかで迷っている場合は、転職エージェントのデメリットもあわせて確認してみてください。
まとめ|「得か損か」ではなく「何を優先するか」で決める
転職の判断は、メリットの数を数えることではなく、譲れない条件を1つ決めることから始まります。
得られるものと失うものを並べても、どちらが多いかで答えは出ません。賃金が上がるかどうかは年代や雇用形態で変わりますし、退職金や評価のように一度手放すと戻らないものもあります。同じ転職でも、人によって結果が反対に出るためです。
迷っているなら、次の3つを順番に進めてみてください。
- 不満の原因を切り分ける……上司や部署が変われば解消するのか、給与や制度など会社の仕組みに原因があるのかを分ける
- 譲れない条件を1つ決める……賃金、労働時間、仕事の内容。すべては満たせない前提で、1つだけ選ぶ
- 決める前に調べる……求人票に書かれていない条件を、面接とオファー面談で確認する
この3つを終えたときに残るのは、転職すべきかどうかの答えではありません。自分が何を優先したいのかという基準です。基準が決まれば、求人を見たときの判断も早くなります。
今が辞めどきかどうかを確かめたい場合は辞めどきのサインを、次にやりたい仕事が定まっていない場合はやりたい仕事の見つけ方を、辞める時期で損をしたくない場合は賞与と退職金から見た退職時期を確認してみてください。






